マンスリーレビュー

2020年3月号トピックス2経済・社会・技術食品・農業

次世代のタンパク質によるフードビジネス革命

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2020.3.1

プラチナ社会センター木附 誠一

経済・社会・技術

POINT

  • 世界全体の人口増や経済発展に伴い、タンパク質不足が深刻化へ。
  • 代替肉や昆虫など「サステインフード」のニーズが高まる。
  • 味や品質などで既存食品と並べばフードビジネス革命につながる。
世界的な人口増加や経済発展に伴って三大栄養素の一つであるタンパク質の需要が急増し、従来の畜産や漁業では賄いきれない状況になりつつある。資源、エネルギー、環境面での負荷軽減が必要なことに加え、宗教や動物愛護といった倫理的な要素もあり、供給が持続可能(サステナブル)なタンパク質(プロテイン)食品である「サステインフード」への期待が高まる。

代替肉では、家畜由来の幹細胞を培養する技術が進展してハンバーガー向け培養肉の製造コストが低下し、市販のめどが立ち始めている。植物由来の代替肉も既に商品化され、世界的な普及が始まっている。昆虫についても、欧米を中心に粉体利用の加工食品が発売され、日本でも昆虫を使った料理を出すレストランが登場している。

サステインフード需要を喚起するには、多様な課題をイノベーションによって克服する必要がある。まずは味、品質、安全性、価格(コスト)などの面で既存食品と同等のレベルを実現することが不可欠だ。昆虫など一部の素材については、持続可能な社会への理解浸透や健康志向の高まりを通じ、消費者の受容性を向上させることも求められる。

消費者側でサステインフードへの抵抗感が弱まれば、供給者側のサプライチェーンや産業構造も激変して、フードビジネス革命が起きるだろう。従来型の食肉は、地方の牧場などを起点とする複数の経路を経て流通している。一方、代替肉は大消費地である都市の近郊に立地したクリーンな工場で製造され、流通過程がシンプルなことから、需要変動に即応した供給が可能で、食材の無駄も減らせる(図)。

家畜が二酸化炭素を出して大量のエサを消費し、処理が必要な排せつ物を出すのに比べて、代替肉は環境負荷が低く疫病による被害も回避できる。とはいえ、従来型の食肉供給も併存することになろう。

フードビジネス革命によってサステインフードが浸透すれば、多様化する食のニーズを満たすことができ、消費者の選択肢が広がる。食品以外の業種からの新規参入も進み、産業自体も大いに活性化することになるだろう。
[図]サステインフード浸透によるビジネス革命