三菱総合研究所は、先ごろ「未来社会構想2050」を発表※1、2050年に目指すべき世界の姿として、「豊かで持続可能な世界」を提案した。
足元では米中貿易摩擦・覇権争い、世界的な分断・格差、気候変動・自然災害など不確実性が高い時代が続く。将来に向けてはAIやロボットなどの新技術がもたらす多くの恩恵の一方、雇用機会喪失への懸念が指摘される。これらの不安を乗り越え、「豊かで持続可能な世界」を目指すには、国単位の解決努力では不十分だ。自由で開かれた貿易・経済システムや気候変動への協調的な取り組みなど、国際的な合意形成が必要である。政治・経済、資源などさまざまな面で外国に依存する日本は、超高齢社会をはじめ自国の課題解決で世界に先例を示す一方、国際協調をリードする立場を高めていくことが、豊かさを持続するための条件となろう。
以下では、「豊かで持続可能な世界」を念頭に、その前提として理解しておくべき世界のトレンドを六つの角度から整理して紹介する(図1)。
足元では米中貿易摩擦・覇権争い、世界的な分断・格差、気候変動・自然災害など不確実性が高い時代が続く。将来に向けてはAIやロボットなどの新技術がもたらす多くの恩恵の一方、雇用機会喪失への懸念が指摘される。これらの不安を乗り越え、「豊かで持続可能な世界」を目指すには、国単位の解決努力では不十分だ。自由で開かれた貿易・経済システムや気候変動への協調的な取り組みなど、国際的な合意形成が必要である。政治・経済、資源などさまざまな面で外国に依存する日本は、超高齢社会をはじめ自国の課題解決で世界に先例を示す一方、国際協調をリードする立場を高めていくことが、豊かさを持続するための条件となろう。
以下では、「豊かで持続可能な世界」を念頭に、その前提として理解しておくべき世界のトレンドを六つの角度から整理して紹介する(図1)。
第一は、「デジタル経済圏の台頭」。国・社会・個人を通じて、消費・投資・生産・分配といった主要な経済活動がデジタル通貨を含むデジタル空間の中で完結される新たな「経済圏」が生まれてくると予想する。こうした経済圏は物理的な制約を受けないため、企業活動や日常生活に広く深く、かつ国際的に浸透するものとなるだろう。世界に展開するプラットフォーマーの果たす役割と責任も大きい。プライバシーの尊重など公益性や国際ルールと協調することが、持続可能の条件と考えられる。
第二に、「覇権国のいない国際秩序」。経済面ではインドが本格的に台頭し、アフリカ諸国もこれに続く中、世界のGDPに占める米中2大パワーのシェアは2050年にかけてそれぞれ2割台へ低下するだろう。その影響は、政治・外交面のパワーバランスにも波及し、覇権国のいない多極的な世界のかじ取りが問われる。
第三は、「脱炭素を実現する循環型社会」。パリ協定がターゲットとする2050年に向けて、再生可能エネルギーを軸とした需給構造の構築や資源リサイクル・代替が加速し、循環型社会の実現を後押しするだろう。国際協調に加えて、技術革新とビジネスモデル・市場構造の変革が、地球環境の持続を可能にする。
第四のトレンドは、「変容する政府の役割」。デジタル経済圏の規模拡大に伴い行政サービスは極限まで効率化することが可能となり必要となる。各国政府には国際的な視点に立ったルールの策定や順守体制の構築、経済格差に対するセーフティーネットの提供など、デジタル経済を側面からサポートする役割が求められる。
第五に、「多様なコミュニティーが共存する社会」では、デジタル空間内での社会分断を行き過ぎさせないことが大切だ。そのために、「知識習得」だけでなく「他者理解」に主眼を置いた教育や、互いの多様性尊重が必要となろう。
第六に、「技術によって変わる人生」。デジタル技術の進化で自由時間が増え健康寿命も延びると、豊かさの尺度は一様ではなくなる。どのように人生を設計し充実感を得ていくのか、一人ひとりにとって重要なテーマになる。
第二に、「覇権国のいない国際秩序」。経済面ではインドが本格的に台頭し、アフリカ諸国もこれに続く中、世界のGDPに占める米中2大パワーのシェアは2050年にかけてそれぞれ2割台へ低下するだろう。その影響は、政治・外交面のパワーバランスにも波及し、覇権国のいない多極的な世界のかじ取りが問われる。
第三は、「脱炭素を実現する循環型社会」。パリ協定がターゲットとする2050年に向けて、再生可能エネルギーを軸とした需給構造の構築や資源リサイクル・代替が加速し、循環型社会の実現を後押しするだろう。国際協調に加えて、技術革新とビジネスモデル・市場構造の変革が、地球環境の持続を可能にする。
第四のトレンドは、「変容する政府の役割」。デジタル経済圏の規模拡大に伴い行政サービスは極限まで効率化することが可能となり必要となる。各国政府には国際的な視点に立ったルールの策定や順守体制の構築、経済格差に対するセーフティーネットの提供など、デジタル経済を側面からサポートする役割が求められる。
第五に、「多様なコミュニティーが共存する社会」では、デジタル空間内での社会分断を行き過ぎさせないことが大切だ。そのために、「知識習得」だけでなく「他者理解」に主眼を置いた教育や、互いの多様性尊重が必要となろう。
第六に、「技術によって変わる人生」。デジタル技術の進化で自由時間が増え健康寿命も延びると、豊かさの尺度は一様ではなくなる。どのように人生を設計し充実感を得ていくのか、一人ひとりにとって重要なテーマになる。