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未来社会構想2050を発表

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2019.10.11

株式会社三菱総合研究所

株式会社三菱総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:森崎孝)は、未来社会構想2050に関するレポートをまとめ、発表しました。
2019年10月25日追記
【ニュースリリースの訂正とお詫び】
10月11日に発表しました本リリースの内容に一部誤りがあり、10月25日に訂正させていただきました。
皆さまには大変ご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。
本ページに添付しているpdfは訂正版に更新しております。
詳しい訂正内容はこちらの正誤表をご覧ください。

要旨

総論(世界のトレンド): 2050年に向けた二つの世界と六つのトレンド

三菱総合研究所が考える2050年に目指すべき世界の姿は、「豊かで持続可能な世界」である。これを実現するには、多国間で「共通利益」を共有するコンセンサスが必要になる。米中に加え、将来台頭するであろう新興国も含めた各国が、基本的人権の尊重や法の支配、プライバシーの尊重、持続可能性の重要性など、根幹となる価値観やそれに基づく道徳・社会規範を共有し、その規範を順守することが求められる。
一方、2050年までの世界経済を展望すると、多極化が一層進展することが予想される。米中に加えてインドなどの新興経済圏が台頭し、大国間の覇権争いが激しさを増していく可能性もある。仮に「豊かで持続可能な世界」が実現されなければ、世界の分断が進展するとともに、国際ルールに基づく自由で開かれた国際経済システムは形成されず、気候変動への取り組みなどの国際的な合意形成も困難となろう。
では、目指すべき世界の姿を追求する上で、押さえておくべき世界の潮流をどう見たらよいか。デジタル技術は国際社会、政府、企業、個人の各レイヤーでさまざまな変革をもたらすことが予想される。以下では、これらの世界の潮流変化を六つのトレンドとして描写する。
トレンド1:デジタル経済圏の台頭
2050年にかけて、プラットフォーマーなどが発行するデジタル通貨や、それにひもづく経済活動が拡大し、デジタル経済圏が形成される。世界中で形成されるデジタル経済圏は、物理的な制約を受けないため、急速に成長し、企業の活動や個人の生活に深く根差すものとなるだろう。
トレンド2:覇権国のいない国際秩序
国際社会では絶対的な覇権国のいない世界が実現する。2030年頃には、中国の経済規模が米国に並ぶ可能性は高い。その後2050年にかけては、米中経済がともに世界のGDPシェアを落とし2割台へ低下する一方、インド経済の台頭・拡大が本格化する。その結果、米中印で世界の半分のGDPを占めるが、いずれも絶対的な覇権国になり切れない状況が続くであろう。
トレンド3:脱炭素を実現する循環型社会
デジタル技術のさらなる普及は、循環型社会の実現を後押しする。技術による変革と、ビジネスモデル・市場構造の変革は、地域社会で小型分散型エネルギー供給システムなどを実現させる。結果として、エネルギー面では太陽光や風力といった再生可能エネルギーを軸とした需給構造の構築が、また資源面ではリサイクル・代替が加速する。
トレンド4:変容する政府の役割
デジタル経済圏の台頭は、政府の役割にも影響を与える。既存の行政サービスは極限まで効率化が求められる一方、国際的なルールの策定や順守体制の構築、デジタル経済圏の拡大にともなう新しい環境整備、経済格差に対するセーフティーネットの提供などで、政府の役割が拡大しよう。
トレンド5:多様なコミュニティが共存する社会
デジタル技術による距離・言葉の壁の撤廃などの変化は、コミュニティの交流を促進する面がある。一方、デジタル空間中で議論や主張をする際には、フィルターバブル※1やエコーチェンバー※2のようなコミュニティの分断を深める特徴があるため、政党や宗教などのコミュニティ間では分断が深まる恐れがある。
トレンド6:技術によって変わる人生
個人の人生も大きく変わる。さまざまなイノベーションの実装に伴って、経済活動の半分以上はデジタル経済圏に関わるものになり、家事の自動化や通勤時間が減ることで自由時間が増える。さらにライフサイエンスの進歩に伴って、健康寿命も延伸される。これらにより人生の豊かさは向上するとともに、人々の豊かさの尺度も多様化していく。

日本:「豊かで持続可能な社会」の実現に向けて

世界トレンドは日本経済・社会にも大きなインパクトをもたらす。日本は少子高齢化や社会保障負担の拡大など重い課題への対応が求められる中、新技術を活かせずに競争力の低下を招けば、多くの世界市場や雇用を失う。日本経済・社会・個人が活力を高めるためには、世界トレンドに対して受け身ではなく潮流の変化をチャンスととらえ、社会課題を解決し豊かな暮らしを実現する必要がある。そのためには、人間中心の技術活用や日本の良さ・強みの発揮とともに、政府・企業・個人による前向きな挑戦が不可欠だ。
2050年に日本が目指すべき未来は「豊かで持続可能な社会」と考える。ここでの「豊か」とは、経済的な豊かさのみならず、人との関わり、働きがい、健康など、総合的な暮らしの満足度を示す。実現に必要な取り組みは次の五つだ。
1. 日本の良さ・強みを活かした世界への貢献
世界の多極化やデジタル経済圏の拡大が進む中で、新たな国際秩序の形成が求められる。地球規模での課題解決に向けて、世界全体での「共通利益」を示し、各国の利害を調整するリーダーが必要になる。
戦後の国際社会への貢献を通じてソフトパワーを培ってきた日本は、他国からの自発的な支援を集め、未来の多国間の枠組み作りに向けて主体的に役割を果たしうる存在だ。他にも、成長と安定を両立する社会モデルや、社会課題を解決する技術など、日本の良さ・強みが豊かで持続可能な世界の実現に貢献できる面は大きい。
2. デジタル×フィジカルで新たな付加価値を創造
日本の匠の技術などフィジカル面での強みをデジタル技術との掛け算で強化することで、環境や防災など世界の社会課題をイノベーションで解決するポテンシャルは大きい。また、デジタル技術の普及による生活コストの低下から、家計支出に占める生活必需品のシェアは低下する。その分、個人の生活を豊かにする価値追求型消費のシェアは、現状35%から50%まで拡大していくだろう。消費者のニッチで多様なニーズに応える多品種・小ロットの高付加価値製品・サービスを世界にも提供できれば、大きな付加価値を生む。
その実現には、先鋭的な価値を創出する中小企業と、豊富な経営資源を有する大企業の融合が重要になるほか、人的資本の強化、デジタル技術を活用した経営高度化などを通じた企業競争力の強化が急がれる。
3. 地域マネジメントを強化し、持続可能な地域社会へ
デジタル技術が深く浸透した社会では、住む場所が通勤距離や買い物の利便性に縛られにくくなる。仕事と生活環境の両立が可能になり、地方の中核市などに人口が集積しやすくなる可能性が高まる。当社試算によると、地方の県庁所在市やその他の中核市※3の人口シェアは現状の12%から17%に拡大する見込み。
こうした追い風を活かし地域社会の持続可能性を高めるには、中核市などを中心とする圏域単位での地域マネジメントが重要になる。圏域内の市町村の特性に応じた機能分化と連携により、行政サービスの効率化・高度化とともに、個別市町村の強みをつなげ、地域の魅力を高める相乗効果も期待できる。広域の地域単位で人材育成や研究開発など長期的な成長の種まきも可能になる。デジタル技術はより広域での地域マネジメント実現を後押しするだろう。
4. 多様な価値観に基づく「自分らしい」人生を実現
人間中心の技術活用を進めることで仕事や家事は大幅に効率化され、自由に使える時間は増えるであろうが、それだけですべての人が、多様な価値観に基づく「自分らしい」人生を実現できるとは限らない。AI・ロボット化、労働市場のボーダーレス化が進展し、人間に求められるタスクはより創造的な領域へとシフトしていくなかで、個人の能力と所得の連動性が一段と高まる厳しい環境も予想される。
デジタル技術の浸透による過度な経済格差を是正するには、社会のニーズに応じた個人の継続的なスキルアップを促す「FLAPサイクル※4」の実践が欠かせない。加えて、経済格差が教育格差や健康格差を通じて増幅・固定化されない社会の仕組み作りも肝要だ。
5. 人生100年時代を支える財政・社会保障制度へ
未病・予防への取り組み強化やライフサイエンス技術の発達による健康寿命の延伸は、人々のQOL(生活の質)を高める上で極めて重要だ。2050年までに健康寿命は約7歳伸びる可能性がある。ただし、財政面から見れば、健康寿命の延伸だけではむしろ社会保障支出が拡大し、財政の持続可能性が危ぶまれる。
健康寿命の延伸と財政の持続可能性を両立するには、高齢者が社会で活躍できる環境整備や、社会保障制度の抜本的な見直し、社会保障分野以外での行政コストの見直しもあわせて進める必要がある。改革により未来への投資余地が拡大すれば、人生100年時代における人々の「人生の質」が高まるとともに、日本経済・社会全体の持続可能性も向上する。

世界のトレンドをチャンスに変え、これら五つの取り組みを包括的に実行することができれば、2050年の日本は社会課題を乗り越え、「豊かで持続可能な社会」を実現できるだろう。

※1:検索エンジンやSNSで実装されている検索結果や表示内容のユーザー別の最適化によって、ユーザーがアクセスする情報が偏ること。

※2:自身と同じ意見の人々ばかりで形成されたコミュニティ内でコミュニケーションを繰り返すことで、その意見が強化されたり、意見の偏りが増幅されたりする現象。

※3:人口20万人以上で必要な行政処理能力を有している58市が中核市として指定されている。

※4:FLAP(飛翔)サイクルとは、当社の造語で、個人が自分の適性や職業の要件を知り(Find)、スキルアップに必要な知識を学び(Learn)、目指す方向へと行動し(Act)、新たなステージで活躍する(Perform)という一連のサイクルを指す。

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