マンスリーレビュー

2020年3月号トピックス6経済・社会・研究開発

50周年記念研究 第3回:「100億人・100歳時代」に誰も孤立しない社会を目指して

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2020.3.1

未来構想センター藤本 敦也

POINT

  • 次の50年は健康寿命の延伸、AIにより人生における時間の使い方が変化。
  • 一方で血縁・地縁などの共同体が希薄化し、孤立問題は深刻化する可能性。
  • コミュニケーション技術などを駆使した新時代の共同体の提案を。
100歳時代となり健康寿命が延伸し、時間に余裕ができたとしても、引き続き残る課題はある。その中の一つが「孤立」であると考えられる。

健康寿命に関しては、再生医療の実用化や、希少糖※1などの予防医学の発展などにより延伸し、今後はサーチュイン遺伝子※2の活性化技術などの進展で抗老化も実現されている可能性がある。労働時間に関しては、価値観の変化や景気などの影響も大きいが、1960年ごろには約2400時間であった年間総労働時間が、50年後の2010年ごろには約1800時間と25%減になっていることを鑑みると、AIなどの発展により今後も労働時間が減少し、余暇の時間が拡大する可能性は高い。

一方、日本においては主なつながりであった血縁や地縁などの共同体が今後、都市化の進展などにより希薄化傾向となる。当社試算では、2050年に向けて地方の県庁所在市やその他の中核市の人口シェアは増加し人口の都市集中傾向が加速する見込みであり、その結果、総体として国内の孤立が深まるとみられる※3

世界と比較しても、日本における孤立の問題は深刻といえる。2005年のOECDの資料では、社会的孤立に関する調査では、「普段友人や同僚、またはその他の社会的グループとの関わりがほとんどない人の割合」で世界(OECD20カ国)平均の6.7%を大きく上回る15.3%だった。孤立と関連する社会課題として、健康への影響や孤独死の増加なども意識されつつある。

世界でも、孤立化や孤独化は重要課題と認識されており、未来社会に向けた重要なテーマである。家族やコミュニティーといった観点からの研究が多い中、「個々人のパーソナリティーを加味した孤立の構造化」を試みる(図)。現段階では地縁・血縁ではない、複数の緩いつながりによる共同体のあり方が次世代の解の一つと考える。ブレインテックやVRなどの進展を踏まえたコミュニケーション技術ロードマップの作成も含めて、新時代における個々の孤立の解消法および、新しい共同体の提案などが重要といえる。

※1:自然界での存在量が少ない単糖(糖の最小単位)や糖アルコール。現代人にとって役立つ様々な生理機能があることが解明されてきている(一般社団法人 希少糖普及協会のホームページより) 

※2:米マサチューセッツ工科大が酵母から発見した遺伝子で、活性酸素の発生を除去し、生物の寿命を延ばすとされている。

※3:当社が2019年10月に発表した「未来社会構想2050」における試算では、2050年に向けて地方の県庁所在市やその他の中核市の人口シェアは、12%から17%に増加する見込みである。
なお関連情報は、MRIマンスリーレビュー「2050年人口減少時代に地域の持続可能性を高める」(2019年11月号)を参照。

[図]孤立の構造

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