マンスリーレビュー

2018年4月号トピックス2ヘルスケア・ウェルネス

日本の介護をアジアに展開するために

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2018.4.1

ヘルスケア・ウェルネス事業本部川邊 万希子

ヘルスケア・ウェルネス

POINT

  • アジアでは高齢化が加速。しかし、これを支える介護制度・産業に遅れ。
  • 超高齢社会に突入した日本の取り組みは「自立支援」がキーワード。
  • 日本の経験を活かした介護サービスの価値をアジアに伝える意義は大きい。
アジア諸国では高齢化の加速※1に伴って、介護制度を導入する機運が高まっている。多くの国は経済発展途上にあるため、「豊かになる前に老いる」と言われており、高齢化対応の制度や産業が脆弱なのが現状だ。日本は2000年に介護保険制度を創設し、超高齢社会の課題先進国としての経験・ノウハウを蓄積している。制度構築と産業振興の両面でアジア諸国に貢献できる可能性は高い。

新たな介護制度を創設するにあたっては「自立支援」の視点を取り入れる必要がある。自立支援とは、加齢に伴い心身機能が低下したからといって、介護職員が全て世話をするのではなく、高齢者の自立した生活を支援することを意味する。日本では介護制度創設当初、高齢者ができることまで奪ってしまい、自立度を低下させ、サービスにかかる介護給付費が増大するという状況も見られた。そのため、改めて自立支援の重要性をうたい、制度や運用上の改正を繰り返した経緯がある。これから高齢者対策を検討するアジア諸国においては、最初から自立支援の考え方を取り入れた制度にすれば、日本と同じ失敗を繰り返さずに済むだろう。

自立支援を考える上で重要なのは、高齢者の興味・関心に配慮することだ。例えば調理好きの主婦が加齢に伴い動作に支援が必要となったとしても、できる限り「自分で調理して食べる」楽しみを奪ってはいけない。心身機能などを考慮して「できないこと」ではなく「できること」に配慮した目標を、本人との合意の上で設定する。これにより気持ちの張りが生まれ、QOL(生活の質)の向上も見込めるだろう。

2017年2月、内閣官房に国際・アジア健康構想協議会が発足し、約350事業者(同12月時点)が参加する官民プラットフォームが設立された。日本の民間事業者の海外進出を通じて、アジア諸国の介護産業振興を支援する体制がここにきて整った。民間事業者も自らの製品・サービスをいま一度、自立支援という観点から見直し、現地の国々の官民と手を携えながら、日本の介護の価値を伝えていく必要があるだろう。

※1:国際連合の「世界人口予測2017年改訂版」によると、2025年の日本の高齢化率の予測値が29.3%なのに対し、中国は14.2%、韓国は19.9%、台湾は19.3%、シンガポールは19.2%、タイは16.0%。

[図]自立支援によるQOLの向上

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