団塊世代の大量退職により、技術・技能が引き継がれずに断絶すると騒がれた2007年から、10年余りが過ぎた。少子高齢化が進むにつれ、熟練技術者はその後も減り続け、企業は技術のデータベース化や職場内訓練(OJT)などの対策を講じてきた。しかし、勘やこつ、ノウハウなど、言葉や数字で表現するのが難しい「暗黙知」を次の世代に体得させるには、膨大な時間と労力と運を要する。抜本的な解決にはほど遠い状態だ。
こうした中での第3次AIブーム到来を受け、技術・技能の伝承にAIが使えるとの期待感が高まっている。そのデータ分析力をフル活用すれば、①暗黙知を、マニュアルなど誰でも認識可能な「形式知」へと変換できる、②現場が何らかの問題に直面した際に、役立つ事例を過去のデータから効率的かつ迅速に引き出して参考にできる、といった効用が見込めるからである。
だが、AIを活用した技術・技能伝承は失敗に終わるケースも多いようだ。成功させるポイントは、戦略をきっちり立てた上で、仮説を一つずつ実証して練り上げるプロセスを絶えず繰り返す点にある。
最初の戦略づくりで欠かせないのは、引き継ぐべき技術・技能自体と伝承上の課題とを体系的に整理し、AIと技術者との役割分担を明確にすることである。両者に期待される価値貢献はそれぞれ何なのか規定しておかなければならない。そして実践では、戦略で設定した仮説を計画的に実証して練り上げていく。表層的な評価にとどまらず、課題と原因をしっかり分析して、技術的な改善へとつなげていく(図)。
成功事例では、AIと技術者が相互補完できている。AIは万能ではないものの、参考事例や思考プロセスなどを「見える化」することは可能だ。それによって、習得のきっかけを、それを受け継ぐ技術者に与えられる。半面で技術者は、AIの解答を引き継いで、人間だからこそ思いつくような創造性を加えることに専念できる。こうした「協働型」の手順を踏むことができれば、技術・技能の伝承がうまくいく確率は上がる。
こうした中での第3次AIブーム到来を受け、技術・技能の伝承にAIが使えるとの期待感が高まっている。そのデータ分析力をフル活用すれば、①暗黙知を、マニュアルなど誰でも認識可能な「形式知」へと変換できる、②現場が何らかの問題に直面した際に、役立つ事例を過去のデータから効率的かつ迅速に引き出して参考にできる、といった効用が見込めるからである。
だが、AIを活用した技術・技能伝承は失敗に終わるケースも多いようだ。成功させるポイントは、戦略をきっちり立てた上で、仮説を一つずつ実証して練り上げるプロセスを絶えず繰り返す点にある。
最初の戦略づくりで欠かせないのは、引き継ぐべき技術・技能自体と伝承上の課題とを体系的に整理し、AIと技術者との役割分担を明確にすることである。両者に期待される価値貢献はそれぞれ何なのか規定しておかなければならない。そして実践では、戦略で設定した仮説を計画的に実証して練り上げていく。表層的な評価にとどまらず、課題と原因をしっかり分析して、技術的な改善へとつなげていく(図)。
成功事例では、AIと技術者が相互補完できている。AIは万能ではないものの、参考事例や思考プロセスなどを「見える化」することは可能だ。それによって、習得のきっかけを、それを受け継ぐ技術者に与えられる。半面で技術者は、AIの解答を引き継いで、人間だからこそ思いつくような創造性を加えることに専念できる。こうした「協働型」の手順を踏むことができれば、技術・技能の伝承がうまくいく確率は上がる。