マンスリーレビュー

2017年12月号トピックス2ヘルスケア海外戦略・事業

周辺ビジネスの整備・確立こそ再生医療実用化の鍵

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2017.12.1

コンサルティング部門 経営イノベーション本部大山 元

ヘルスケア

POINT

  • 再生医療製品の製造能力は、機器・サービスなどの周辺ビジネスが左右。
  • ニッチビジネス型の日本企業は仕様共通化が遅れている。
  • 産学官共創による仕様共通化など、国際競争力を高める体制を確立すべき。
培養した細胞などを用いて、病気などによって失われた臓器や組織の修復・再生を目指す「再生医療」は、急速に研究開発や実用化が進みつつある。米国を中心に開発モデルの共通化が進む中、日本も実用化に向けた取り組みをさらに加速させる必要がある。人の細胞からなる再生医療製品の場合、製造方法により品質や歩留まりなどが大きく変化する傾向が強く、バリューチェーンを構成する装置産業や医療機関への搬送サービスなど「周辺ビジネス」の実力が、再生医療産業全体の能力を規定する(図)。

欧米グローバル企業(GEヘルスケア、ロンザなど)の場合、さまざまな周辺製品などをワンストップ供給することで、バリューチェーン全体における仕様共通化を実現している。一方、日本における周辺ビジネスは、「多数の企業が個々に参入したニッチビジネス型」であり、さらに「企業間における共通化の動きが鈍い」といった課題が存在する。日本で再生医療の実用化が加速しない原因はここにある。

日本の再生医療周辺ビジネス産業が採るべき戦略は何か。一つには、グローバルニッチ・トップを狙う方法である。この実現には研究開発を継続する資金力だけでなく、海外企業や大学などへの積極的なアプローチ、営業展開が必要である。

二つ目は、ワンストップ型ビジネスの構築が可能な企業を中核に、ほかの企業が協力・連携するモデルである。さまざまな再生医療関連のビジネスにグループ全体で取り組んでいる富士フイルムや日立などがコア企業の候補となろう。

第三の道は、産学官連携による共同研究開発の推進である。企業間の共同研究開発に関しては、知的財産保護の面などで不安を覚える向きもあろう。だが産業草創期には、企業同士が研究開発や標準化検討で協力する「共創開発モデル」は有効な選択肢だ。例えば1970~80年代の日本の半導体産業は、国の積極的支援を受けつつ多くのメーカーが協力し、中核技術の研究開発を成功させた。欧米の再生医療業界は現在、産学官が積極的に協力しモデリングを推進しつつある。日本も再生医療の土台となる周辺ビジネスの仕様共通化を急ぐなどして、世界で戦える体制を確立するべきだ。
[図]再生医療の周辺ビジネス