新興国の景気は拡大を続けている。2016年のASEAN(東南アジア諸国連合)の経済成長率は実質4.6%に達した。成長に大きく寄与しているのは、高所得層や中間層の増加に伴う内需拡大である。当社は、新興国における富裕層向け消費市場が、2030年に日本の3倍の規模に拡大する可能性があると予測している※1。
こうした国々に進出する企業にとっては、富裕層の開拓がますます重要となろう。だが、富裕層の分布度合いは国によって大きく異なる。その国全体の1人あたりGDPなどのマクロ指標だけでは、富裕層を効率的に攻略するツールとしては不十分だ。富裕層が住みたがる傾向の強い大都市を軸とした分析が不可欠になる。
アジア主要国における富の集中の実態を比較・分析するために、行政区分ごとの1人あたりGDPを、各行政区分のGDP構成比で積み上げてみた(図)。例えばタイの場合、首都バンコクの1人あたりGDPが全国平均の4.8倍と、「都市の富裕度」は調査対象国で突出している。しかし、タイ全国にバンコクが占めるGDPシェアは6%と、他国よりも低い。つまり、バンコク在住の富裕層の数は相対的に多くないと推測される。
逆にフィリピンでは、首都マニラの「都市の富裕度」は3.1倍にとどまるが、国内シェアは38%に上る。また、中国やインドはほかの新興国に比べ都市間の格差は小さい。
この図をもとにして極端に言えば、GDPの40%近くをカバーしようとする場合、フィリピンではマニラだけを攻めれば足りるが、タイではバンコクに加え、第二、第三の都市への進出も成功させねばならない。中国やインドでは上海や北京、ニューデリーやムンバイだけではなく、少なくとも8都市以上を攻略する必要がある。ただし、この図はあくまで各都市の相対的な富の分布状況を示すものであり、富の大きさとは関連していないことには注意すべきだろう。
新興国に進出する日本企業が富裕層市場を獲得するには、進出国の富の分布を丁寧に見た上で、どのような優先順位で新興国の富裕層を攻略していくか、といった戦略を立案することが重要になりそうだ。
こうした国々に進出する企業にとっては、富裕層の開拓がますます重要となろう。だが、富裕層の分布度合いは国によって大きく異なる。その国全体の1人あたりGDPなどのマクロ指標だけでは、富裕層を効率的に攻略するツールとしては不十分だ。富裕層が住みたがる傾向の強い大都市を軸とした分析が不可欠になる。
アジア主要国における富の集中の実態を比較・分析するために、行政区分ごとの1人あたりGDPを、各行政区分のGDP構成比で積み上げてみた(図)。例えばタイの場合、首都バンコクの1人あたりGDPが全国平均の4.8倍と、「都市の富裕度」は調査対象国で突出している。しかし、タイ全国にバンコクが占めるGDPシェアは6%と、他国よりも低い。つまり、バンコク在住の富裕層の数は相対的に多くないと推測される。
逆にフィリピンでは、首都マニラの「都市の富裕度」は3.1倍にとどまるが、国内シェアは38%に上る。また、中国やインドはほかの新興国に比べ都市間の格差は小さい。
この図をもとにして極端に言えば、GDPの40%近くをカバーしようとする場合、フィリピンではマニラだけを攻めれば足りるが、タイではバンコクに加え、第二、第三の都市への進出も成功させねばならない。中国やインドでは上海や北京、ニューデリーやムンバイだけではなく、少なくとも8都市以上を攻略する必要がある。ただし、この図はあくまで各都市の相対的な富の分布状況を示すものであり、富の大きさとは関連していないことには注意すべきだろう。
新興国に進出する日本企業が富裕層市場を獲得するには、進出国の富の分布を丁寧に見た上で、どのような優先順位で新興国の富裕層を攻略していくか、といった戦略を立案することが重要になりそうだ。
※1:三菱総合研究所「内外経済の中長期展望2017-2030年度」。