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2017年10月号トピックス2エネルギー・サステナビリティ・食農

福島第一原発廃炉 現場適用が今後の課題

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2017.10.1

原子力安全事業本部柳川 玄永

エネルギー・サステナビリティ・食農

POINT

  • 「燃料デブリ取り出し」は福島第一原発廃炉の最難題である。
  • これまでは「技術開発の視点」を中心に国が主導してきた。
  • 成果を出すためには「現場適用の視点」が重要で今後の鍵となる。
東京電力福島第一原子力発電所廃炉の進め方を示す「中長期ロードマップ」が2017年9月26日に改訂※1された。中長期ロードマップはこれまでも進捗に応じて改訂されてきたが今回、「燃料デブリの取り出し方針」が初めて示された。

「燃料デブリ」とは、事故によって溶け落ちた核燃料がほかの構造物と溶融・固化したもので、その取り出しは福島第一原発廃炉の最難題とされる。

燃料デブリが高い放射線を発しているほか、建物内は放射線量が高い場所も多く、損傷を受けた箇所もあるため、現時点では燃料デブリの位置の把握すら試行錯誤の連続である。その上、福島第一原発の燃料デブリは格納容器内で広範囲に分布していると考えられており、そのような燃料デブリの取り出しは世界にも前例がない。

現在は燃料デブリ取り出しに向け、国が中心となって、主に「技術開発の視点」でのアプローチが行われており、燃料デブリの詳細な位置の把握や性状の調査、取り出すためのさまざまな技術開発が進められている。

しかし、例えどのように素晴らしい技術でも、現場で使えるものでなければ、何の意味もない。

現場で成果を出すためには、作業員の安全確保・現場状況に応じた機器の調整・機器の設置・機器の扱い・維持管理などが容易にできること、導入・維持管理コストが合理的な範囲に収まることなどが重要となる。特に燃料デブリの取り出しは大きな不確実性を内包するため、試行錯誤的な運用に耐えられなければならない。

このような「現場適用の視点」でのアプローチは、これまで十分に取り組まれていなかったが、今回の中長期ロードマップ改訂で明記※2され、今後は検討が加速する。これを進めるのは、実際に廃炉を実施する東京電力でなければならない。

東京電力にとって、国主体で開発された技術の現場適用は容易には解決できない難しい課題だが、これこそが福島第一原発廃炉の今後の鍵である。燃料デブリ取り出しに向け、福島第一原発の廃炉は、ここからが正念場だ。

※1:「東京電力ホールディングス㈱福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ(案)」廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議(2017年9月26日)。

※2:「予備エンジニアリング」として「現場適用の視点」が一部盛り込まれた。

[表]東京電力福島第一原子力発電所の主なマイルストーン