ユーロ圏で金融緩和の縮小が検討されている。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は2017年9月の理事会後の記者会見で、政策スタンスの変更が「おそらく10月に決定される」と発言した。ECBはデフレ回避目的でマイナス金利や国債などの資産購入を続けてきたが、変更が決まれば、資産購入規模は来年の年明けから削減されることになる。
緩和縮小の背景には、ユーロ圏全体の景気が2016年後半から緩やかに回復し、デフレリスクも後退している点がある。テイラールール※1に基づくユーロ圏の最適な金利水準は13~14年にマイナス0.4%だったが、16年にはプラス0.8%に上昇した。
しかし、ECBは政策金利の下限である中銀預金金利を、現在もマイナス0.4%にとどめている。こうした状況が続いてきたのは、主要国の経済状態に依然として、大きなバラつきがあるからだ。
16年時点の国別最適金利を見ると、大幅な経常黒字が続くなど経済状態が好調なドイツの最適金利はプラス2.5%に達し、フランスもプラス圏を維持。インフレ加速を恐れるドイツは、早期の金融緩和縮小を主張している。一方で、南欧諸国は債務危機後の緊縮財政も響き、景気回復が遅れている。最適金利はギリシャがマイナス6.1%で、イタリアがマイナス1.3%、スペインもマイナス0.3%にとどまる(図)。
ECBはユーロ圏唯一の独立した中央銀行として、一つの金融政策で各国のさまざまな経済状況に対応せねばならない。高失業や不良債権問題を抱える南欧諸国は、急激な金融引き締めには耐えられない恐れが大きい。一方で、緩和がこれ以上長期化すれば、追加的な金融政策を講じる余地が限られ、経済ショックに対して脆弱な状況が続く。このためECBは、緩和縮小を慎重に進めざるを得ない。
金融政策以外にも、南欧諸国を中心に労働市場の柔軟化やビジネス環境の改善といった構造改革などを進め、経済ショックに対する耐性を高める取り組みも必要だろう。金融政策へ過度に依存するのではなく、構造改革が求められるのは日本も同じだ。ユーロ圏での構造改革が進むかどうかは、日本の参考にもなるのではないか。
緩和縮小の背景には、ユーロ圏全体の景気が2016年後半から緩やかに回復し、デフレリスクも後退している点がある。テイラールール※1に基づくユーロ圏の最適な金利水準は13~14年にマイナス0.4%だったが、16年にはプラス0.8%に上昇した。
しかし、ECBは政策金利の下限である中銀預金金利を、現在もマイナス0.4%にとどめている。こうした状況が続いてきたのは、主要国の経済状態に依然として、大きなバラつきがあるからだ。
16年時点の国別最適金利を見ると、大幅な経常黒字が続くなど経済状態が好調なドイツの最適金利はプラス2.5%に達し、フランスもプラス圏を維持。インフレ加速を恐れるドイツは、早期の金融緩和縮小を主張している。一方で、南欧諸国は債務危機後の緊縮財政も響き、景気回復が遅れている。最適金利はギリシャがマイナス6.1%で、イタリアがマイナス1.3%、スペインもマイナス0.3%にとどまる(図)。
ECBはユーロ圏唯一の独立した中央銀行として、一つの金融政策で各国のさまざまな経済状況に対応せねばならない。高失業や不良債権問題を抱える南欧諸国は、急激な金融引き締めには耐えられない恐れが大きい。一方で、緩和がこれ以上長期化すれば、追加的な金融政策を講じる余地が限られ、経済ショックに対して脆弱な状況が続く。このためECBは、緩和縮小を慎重に進めざるを得ない。
金融政策以外にも、南欧諸国を中心に労働市場の柔軟化やビジネス環境の改善といった構造改革などを進め、経済ショックに対する耐性を高める取り組みも必要だろう。金融政策へ過度に依存するのではなく、構造改革が求められるのは日本も同じだ。ユーロ圏での構造改革が進むかどうかは、日本の参考にもなるのではないか。
※1:スタンフォード大学のジョン・ブライアン・テイラー教授が1993年に提唱した、中央銀行が誘導する政策金利の適正値をマクロ経済指標により定める関係式。