小宮山 一部地域では企業寄付によって強靱化を図っているところもあります。防災のために自治体が予算を獲得することは重要ですが、厳しい財政状況の中で予算化には時間がかかります。しかし、さまざまな対策を前倒しで実施し災害に備えなければ間に合いません。地域で防災対策の必要性を共有し、企業寄付などの促進などの機運を醸成していくことが重要かつ喫緊の課題であり、今回の評価ツールはその一助になると考えています。
平山 数字で見えるのは耐震化率ばかりで、その後の被害評価や、同じハザードなのに被害を受ける管路と受けない管路はどうして生まれるのかといった分析は後回しになっていました。その点、今回の評価ツールは被害が出ることも積極的に評価し、修正すればどう良くなるのか、“回復力”を見える化したことが一番大きな成果です。官だけが先行してしまうと反発につながりかねませんが、産官でエビデンスをつくれるようになった点は非常に大きい。
そもそも、日本の水道の漏水率は平均5%と世界的にも非常に優秀にも関わらず、想定外の影響を受けるとお手上げとなってしまいます。アメリカは減災に注力する文化なのに対し日本は防災と言われますが、これを変えるポテンシャルを今回の評価ツールは持っています。
東穗 脱炭素社会に向けた世界的潮流と、ESG金融の進展・流れによる企業の気候変動分野での戦略開示や目標設定が進んでいますが、レジリエンス分野も本来はESGの「S」を構成するもので社会や経済を支えるために必須の取り組みのはずです。このようなツールによって、ESGのカーボンニュートラルの流れに類する潮流が沸きあがればと考えています。対策ができていないポイントをあぶり出すためではなく、レジリエンスの対策を効果的に着実に進め、事前に被害を減らせたという「頑張った成果」を定量的に示す指標として、活用いただければという思いです。
平山 外的要因が次々変化する中で、これからの時代に即した一歩となるでしょう。産官学の連携はもちろん、自ら「自分たちのエリアのインフラを守り支えていく」という地域力・減災力を高められる頭脳集団を、MRIさんなら育てられると期待しています。ただし、MRIが前に出すぎてもダメ。地域の人が「自分たちでやるんだ」という機運を高めるような動きをしてほしいですね。