マンスリーレビュー

2020年7月号トピックス3科学・安全地域創生

事前防災を未来のビジネスチャンスに

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2020.7.1

科学・安全事業本部東穗 いづみ

科学・安全

POINT

  • 大規模災害が想定される中、公助のみの事前防災投資には限界。
  • 事業継続のため、企業も「社会基盤の強靱化」を担うべき。
  • 体制を民主導で構築して、自社の持続と飛躍の機会へ。
近年、度重なる自然災害の発生により災害復旧費の支出が膨張している。そのため、国の防災関係予算のうち災害予防へは2割程度しか配分できない状況となっている※1。災害予防に対する公的な「事前防災」投資のみでは、もはや限界がある。企業など民間による投資が不可欠な時代が来たといえるだろう。

企業は平時より災害発生時に備えて、事業継続計画や耐震化、備蓄などの「自社の迅速な復旧のための防災」対策に取り組んでいる。しかし、事前防災投資への関心は、大企業でもいまだ低いのが現状だ。企業は、事業継続に関わる「地域の社会基盤の強靱(きょうじん)化」に対し、行政と連携・協力して、災害からのリスク回避・リスク低減策にもっと関与する必要があるのではないだろうか。

先進事例は、オーストラリアに見られる。同国の不動産や通信、保険、金融などの企業トップが集うAustralian Business Roundtable※2は、国の資金を応急・復旧対策から事前対策へ振り向けるべきだと提言した。「事前防災・緩和に1ドル投資することで、復旧費用を最低2ドル節約できる」との考えを掲げ、さらに各業界のもつ街づくりや資金調達などの事業スキームをその対策に活かすべきだとしている。その提言を受け、「優先的に」災害対策を実施する箇所を示した全国的なオープンプラットフォームが構築され、国や州レベルでの災害投資の枠組みに反映されている。

日本においても企業の災害投資の取り組みに加え、官民双方が拠出して事前防災のためのファンドをつくり、全体でストックし、柔軟に運用する仕組みを構築して、必要な対策へ効果的に投資することを提案したい。民間投資を促す以上は、資金を拠出したり、得意な技術やスキームを提供したりする企業に対して、企業価値の評価が高まる仕組みも必要だ。

この取り組みを公が進める事前防災対策へ効果的に統合すれば、全国的なレジリエンス※3が早期に達成できる。今こそ、官民協働・集合知の防災対策へと転換し、各社持続と飛躍の機会とすべきである。

※1:内閣府「令和元年版防災白書」。

※2:オーストラリアのコミュニティーが自然災害に対し、よりよく「備え、対応し、復旧する」ことを共通のビジョンに、民間企業などの組織のリーダーによって2012年に組成。

※3:さまざまな環境変化に対する適応能力、リスク対応能力のこと。「平成25年版防災白書」では、「『強くてしなやかな(強靱な)』国づくりを進めていくこと」などと表現している。

[図]災害直後のイメージ

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