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2020年7月号トピックス2原子力安全

積極的な新技術適用で原子力に次世代の安全性を

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2020.7.1

原子力安全事業本部鈴木 清照

原子力安全

POINT

  • 原子力分野では旧来技術を重視する風潮もあり新技術導入は進んでいない。
  • しかも、ベテラン退職などにより既存技術の維持は困難になりつつある。
  • 原子力分野に適したプロセスでの新技術適用は、安全性にも大きく寄与。
電力分野において昨今、AI、IoTなどによるDX※1を推進し、設備の安全性、運用性を大きく向上しようとする動きが見られ始めている。しかし、原子力発電所においては、こうした新技術の導入が進んでいない。なぜなら、原子力発電は極めて厳しい規制を求められる業種であり、新技術を導入しようとすれば、安全性への影響評価に多大な労力とコストがかかるなどのハードルが存在するからだ。

しかし、いつまでも新技術の導入をためらっていては、むしろ原子力発電所の安全を脅かすことにもなりかねない。

原子力発電所では、30〜40年前の設備が継続利用され、ベテラン技術者や機器サプライヤーなどの多くのヒトに支えられていることが多い。ところが、再稼働が限定的な状況において、一部の機器サプライヤーは事業から撤退してしまい、また、ベテラン技術者の退職も進むなど、設備の維持や更新が困難になる懸念が高まっている。「デジタルは信用できない」「ヒトの目、手が最も信頼できる」—といった旧来の発想だけでは、もはや安全は維持できない。

こうした背景を踏まえて、蓄積された安全技術と新技術・新発想を両輪とし、「次世代の安全性、新しい価値」を目指したい(図)。この際、火力や水力発電所において進められている、「設備点検をドローンに代替させる」「拡張現実(AR)により現場で付加的な情報を提供する」など、ヒトによる技術伝承から脱却しようとする対策は参考となりえる。米国の原子力分野においては、希少部品の製造に3Dプリンターを採用する取り組みが始まっており日本国内でも注目を集めている。

ただし、安全性への影響が少ない箇所から適用し、妥当性検証を段階的に実施するなど、国民に対する高い説明性(透明性)が求められる原子力分野ならではの適用方法を模索していくことが重要だ。その上で、デジタルイノベーションだけでなく、事故時にも溶融に至らせない燃料の開発など、原子力分野ならではのイノベーション推進にも注力し、両輪をもって原子力発電の安全性、利用価値を高める必要があろう。

※1:Digital Transformation。

[図]原子力発電分野における次世代の安全性、新しい価値の創出

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