コラム

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「復興五輪」、福島県の復興や放射線の健康影響への認識を確かにするために重要なこと

第4回調査結果の報告(2021年実施)

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2022.1.18

セーフティ&インダストリー本部義澤宣明

白井浩介

伊藤優美

三菱総合研究所は福島県の復興状況や放射線の健康影響に対する東京都民の意識や関心・理解などに着目したアンケート調査を、2017年、2019年、2020年に続き、2021年8月に実施した。

5年間にわたる東京都民の意識の変化を分析した結果から、福島県の復興や放射線の健康影響に関する理解は進んでいるものの、放射線による健康影響についての科学的知見が十分には浸透していないことが示唆された。

調査の概要

第4回意識調査(2021年調査)
  • 調査期間:2021年8月25日~27日
  • 調査地域(回答数):東京都(1,000サンプル)
  • 調査対象:20歳~69歳の男女
  • 調査方法:インターネットアンケート
参考
2017年、2019年、2020年に実施。調査地域、調査対象、調査方法は第4回調査と同じ条件である。

調査結果から分かったこと

  • 福島県産食品を自分が食べる場合、「放射線が気になるのでためらう」とする回答割合は、2020年まで一貫して減少傾向にあり、2割以下となっていたが、今回、「福島県産かどうかは気にしない」とする肯定的な回答も2.4ポイント減少した。
  • 事故による放射線に起因する健康影響に対する理解が徐々に浸透・改善しつつあることが確認できた。しかしながら、依然として次世代影響の可能性が高いとする回答割合が3割以上となっている。引き続き、放射線の健康影響に関する正しい理解の促進など、偏見や差別を生まないような対応が重要である。
  • 東京2020大会を通じた福島県の復興に対する実感は、福島県の復旧・復興が進んでいるとの印象に繋がった可能性がある。一方で、福島県産食品への意識や福島県民の生活等に対する印象の変化に繋がったとは言えない。

調査結果に基づく提言

  • 福島県産食品への不安が2021年にやや高まっている状況が見られた。この傾向が一時的なものであるか否かを継続的な調査によって把握していく必要がある。
  • 偏見や差別に繋がり得る放射線による健康影響に対する理解については、徐々に深まってきてはいるものの、未だ十分とは言えない。引き続き、国連科学委員会の報告など、最新の科学的な知見の理解を進めるための対応が求められる。
  • さらなる復興の推進、風評の払拭のため、東京2020大会から得られた「レガシー」を積極的に活用し、「現地の体感」の機会提供に繋がる取り組みを継続していくことが求められる。

詳細レポート

調査結果の詳細は別添の「詳細レポート」に記載している
「がんの発症など後年に生じる健康障害」および「次世代以降の人への健康影響」が福島県の方々にどのくらい起こると思うか」を尋ねた結果を以下に示す。前回2020年の調査と比較して「後年の健康障害」については「可能性が高い」とする回答(選択肢3、4の合計)が1.3ポイント減少した。「次世代以降への健康影響」については、4.3ポイントの減少となり減少幅が大きかった。
図 放線による福島県民(後年)への健康影響に関する東京都民の意識
図 放線による福島県民(後年)への健康影響に関する東京都民の意識
図 放射線による福島県民(次世代)への健康影響に関する東京都民の意識
図 放射線による福島県民(次世代)への健康影響に関する東京都民の意識
詳細レポートには、図1~図17までの17種類のアンケート結果が紹介されている。