コラム

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東京五輪を迎えるにあたり、福島県の復興状況や放射線の健康影響に対する認識をさらに確かにすることが必要

第2回調査結果の報告(2019年実施)

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2019.11.28

原子力安全事業本部義澤宣明

村上佳菜

白井浩介

シンクタンク部門統括室馬場哲也

「復興五輪」とも呼ばれる東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京2020大会)の開催が目前に迫っている。これに伴い、福島第一原子力発電所において日々発生する処理水の処分や、福島県産食品の安全性について、諸外国からも注目が集まっている。特に、福島県産食品の安全性については、多くの諸外国の理解が得られている一方で、残念ながら一部には正しく理解されているとは言えない状況にある。このような中で、東京2020大会では東日本大震災および原発事故からの復興の姿を発信する役割が開催都市である東京にも期待されることから、復興の現状について東京都民が理解を深めておくことが大切である。
三菱総合研究所は福島県の復興状況や放射線の健康影響に対する東京都民の意識や関心・理解などに注目したアンケート調査を2017年に実施した。東京2020大会が目前に迫った現状を確認するため、2017年調査から2年を経た2019年6月に2回目の調査を実施した。

調査結果から分かったこと

  • 福島の現状や事故による放射線の健康影響に対して理解は進んでいるものの、2年前と比べて大きな改善は見られない。
  • 2019年調査の時点においても、2017年調査と同様、約半数の東京都民が最新の科学的な知見とは異なり放射線の次世代への健康影響を懸念していた。
  • 最新の科学的知見に反して、次世代への健康影響への懸念が続くと、国内の一部に差別や偏見の意識が根付いてしまうことが危惧される。

調査結果にもとづく提言

  • 放射線の健康影響について日本国内での理解が進まない状況は、海外での理解促進の妨げになるという、グローバルな視点の上に立った対応が今後より一層重要になる。
  • 差別や偏見の問題で、被災した方々が苦しむようなことは避けなければならず、放射線の健康影響に関する理解を進める政策等が引き続き積極的かつ着実に進められる必要がある。
  • 東京2020大会に向けた準備が加速されていく中で、わが国の置かれた状況を踏まえ、日本全体で震災に対する関心を薄れさせることなく、国内および国際社会に向けた復興五輪の意義をあらためて認識するとともに、被災地の復旧・復興に対する理解をあらためて深めることの大切さを認識する必要がある。