レガシー共創に向けて、あらためて重要な視点として、以下3点を提唱します。
1)Beyond 2020
未来に向けたレガシーを考えるときには、2030年・2050年の未来像を展望することが必要です。わが国の抱える多様な課題を、すべて2020年までに解決することは難しいですが、他方それらをオリンピック以降に先送りすることは望ましくありません。2030年には団塊の世代が80歳を超え、2050年には人口が1億人を大きく割ることが見込まれています。2019年ラグビー・ワールドカップ、2021年ワールド・マスターズ・ゲームズ関西大会などのイベント連携も含めて、オリンピックという一大イベントの持つ求心力と時限性を活用して、成熟社会への構造転換を図る絶好のチャンスとして捉えたいところです。
2)Beyond 東京
大会イベントは開催都市中心にならざるを得ませんが、レガシーは東京だけのテーマではありません。東日本大震災の被災地を含む全国各地も2020年を契機に課題解決と地方再生に能動的に取り組むことが期待されます。例えば、世界が注目することを契機に、食や文化等を切り口とした観光振興・地域活性化やそのための新たなプレーヤー育成、環境整備を図ってはいかがでしょうか。事前合宿などの一過性の対応だけでなく、食や文化等の輸出振興なども含めてその後の地域の持続的発展につながるレガシー創出が期待されます。
3)Beyond Sector
レガシー創出に向けては、官民挙げてのオールジャパンでの取り組みが求められます。既に未来に向けた検討の萌芽は出始めています。例えば、文部科学省は「夢ビジョン2020」として2020年に向けた夢のコンセプトと具体案を幅広い関係者との協議を通じて提唱しているほか、各府省は2020年をターゲットとした施策実現に動き始めています。また地方自治体においては、各地で五輪推進本部を立ち上げる動きが加速しています。民間企業においても中期経営計画等で2020年を視野に入れた事業機会検討の動きが出始めています。こうした検討をバラバラにするのではなく、異業種・産官学が手を携えて分野横断・共創的に推進していくことが期待されます。