ニュースリリース

内外経済の中長期展望 2016-2030年度

2016.6.22

三菱総合研究所

株式会社三菱総合研究所(代表取締役社長:大森京太、東京都千代田区永田町二丁目10番3号)は、2016-2030年度の内外経済の中長期展望に関するレポートをまとめました。

要旨

日本経済の展望

日本経済の潜在成長率は、人口減少や投資の伸び鈍化を背景に、2030年度にかけて0%近くまで低下。期待成長率の低下は、設備投資や研究開発、人材育成など「未来への投資」を一段と鈍らせ、更なる経済活力低下とともに国民の将来不安を増幅させるであろう。日本経済の潜在力を最大限に引き出し、持続可能かつ活力ある日本経済を実現するための改革のポイントは、以下の4つである。

Point1:時代の求めに応じた人材力の強化

人材は経済活力の源泉である。人工知能(AI)など新技術の台頭で、人間に求められる能力は大きく変容する中、労働力の「質」向上が重要になる。当社の調査によれば、若年層を中心に日本の労働者のスキル向上への意欲は高い。こうした意欲を最大限活かすためにも、硬直的な雇用市場・制度の改革や、教育・職業訓練の在り方を時代の変化に合わせ柔軟に見直していく必要がある。


Point2:デジタル新技術の最大活用で需給両面の底上げ

AIやモノのインターネット化(IoT)、ロボットなどデジタル新技術の普及・発展は、国民の生活や企業の生産活動に大きな変革をもたらす。当社が実施した「未来のわくわくアンケート」では、高機能住宅、ゲノム解析治療、災害予測など、現在はまだ実用化/普及していないサービスや製品に対する潜在需要がいかに大きいかが確認された。新技術は生活の質改善とともに社会課題の解決にもつながる。また、新技術の活用次第で、企業の生産性も飛躍的に上昇する可能性があり、需給両面で成長押上げが期待される。


Point3:アジアの中間/富裕層需要の多面的な取り込み

2030年にはアジア新興国に巨大な中間/富裕層の誕生が展望される。日本企業が中間/富裕層の潜在需要を掘り起こす製品・サービスを提供できれば、輸出、投資収益、インバウンドなど多面的な外需の取り込みにより日本の成長が加速。デジタル新技術の台頭により、労働コストよりも技術力が国際競争力を左右する時代になれば、生産拠点としての日本の地位も相対的に高まる。


Point4:2022年までの社会保障制度の集中改革

日本の社会保障制度は、超高齢化社会で制度疲労が顕現化している。特に団塊世代が75歳以上になる2022年以降は医療・介護費の一段の増大が予想され、過剰なサービス抑制や「自助」の範囲拡大に向けた制度改革は急務だ。同時に、情報通信技術(ICT)やロボットなどの技術の活用により、民間分野で健康寿命延伸や自立生活を支えるサービスを増やすことも重要である。高齢者の生活の質向上と社会保障制度の持続可能性を両立できれば、高齢者も若年者も含めた「全世代」の生活の安定につながり、前向きな支出や投資を増やすことができる。

海外経済の展望

  • アジア新興国経済は、中間層拡大や都市化進展を伴う経済成長が続き、世界GDPに占めるアジアの比率が高まる。中国が「安定」成長を続けられれば、2030年までに中国のGDPが米国を抜き、世界経済の「中心」は米国からアジアへとシフトするだろう。しかし、中国が安定成長に移行するためにクリアすべき課題は多い。中国経済の動向が世界経済の成長シナリオを大きく左右しよう。
  • 米国経済は、2010年代後半にかけて、金融危機後の調整圧力の緩和が成長押し上げ要因となるであろう。その後は人口の伸びが鈍化するものの、ICTや研究開発の資本蓄積進捗による生産性向上は期待できることから、+1%台後半の潜在成長率近傍での推移を見込む。
  • ユーロ圏経済は、バランスシート調整圧力や銀行の不良債権問題、ユーロ圏内の不均衡是正の遅れなどにより、低成長が続く可能性が高い。潜在成長率は2030年にかけて+0%台半ばまで緩やかに低下を見込む。 

内外経済の中長期展望 2016-2030年度

全文 [4MB]

【目次】
Ⅰ.総論 [1.2MB]
Ⅱ.日本経済 [2.1MB]
Point1. 時代の求めに応じた人材力の強化
Point2. デジタル新技術の最大活用で需給両面の底上げ
Point3. アジアの中間/富裕層需要の多面的な取り込み
Point4. 2022年までの社会保障制度の集中改革
Ⅲ.海外経済

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