ニュースリリース

三菱総合研究所、ワコール、Lily MedTechと乳がんのアンケートを実施

高濃度乳房など関連知識の認知度は検診受診率に対して低くとどまる
2020.7.21

株式会社三菱総合研究所

POINT

株式会社三菱総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:森崎孝、以下 MRI)は、2020年4月、株式会社ワコール(本社:京都府京都市、代表取締役社長:伊東知康、以下 ワコール)および株式会社Lily MedTech(本社:東京都文京区、代表取締役社長:東志保、以下 Lily MedTech)の協力のもと、20~60代女性1,000人に乳がん検診の動向や、乳がんのリスクや治療への認知度に関するアンケート調査を実施、検診受診が乳がんの関連知識の認知度向上に効果的な影響を与えられていない現状を確認しました。

1.背景・経緯

MRIではプラチナ社会研究会「「女性活躍推進」認定を目指す会」などの活動を通じ、女性の勤務中のパフォーマンスや心身の不調による欠勤等に関する調査・研究や、女性版 健康経営指標の開発を行ってきました。乳がんは若年層における罹患率が高く、ホルモン療法を含めた治療期間が5年以上の長期にわたるため、女性の活躍にも影響を及ぼします。
政府のがん対策推進基本計画において、乳がんの検診受診率目標は「50%以上」となっており、検診に関するアンケート調査は多く行われています。しかし、高濃度乳房(デンスブレスト)や、精密検査におけるがん発見率、治療に伴う仕事や家庭への影響など、検診後も含めた関連知識の認知度に注目した調査は少ないことから、今回アンケート調査を実施し、20~60代の女性1,000人から回答を得ました(図1参照)

2.主な調査結果

■過去2年間の乳がん検診受診率は40代がピーク、30代でも30.0%が検診受診
過去2年間でマンモグラフィによる乳がん検診を受けた人の割合は、20代で4.0%、30代で13.5%、40代で47.0%、50代で46.5%、60代で41.5%でした。超音波(エコー)検査のみを受けた人を足すと30代で31.0%、40代および50代では検診受診率は50%超でした(図1参照)

■過去に要精密検査と診断されたことがある人の割合は40~60代で約20%、30代でも6.4%
過去に1回以上乳がん検診を受診し、「要精密検査」と診断されたことがある女性の割合は、30代で6.4%、40代で17.7%、50代で21.4%、60代で20.0%でした。がん検診の都道府県別プロセス指標(国立がん研究センター)における乳がん検診の要精検率は全国平均で6.6%ですが、1人の女性が繰り返し検診を受診すると、要精密検査と診断される可能性はそれよりも大きくなることが明らかとなりました(図2参照)

■要精密検査と診断されても10人に9人は偽陽性(がんではない)であることを知っている人は8.7%
要精密検査者でも、実際にがんと診断される割合は40~50代であればおよそ10人に1人です。このことを知っていたのは全回答者のうち8.7%にとどまりました。年代別にみると20代で2.5%、30代で6.0%、40~60代は10.0~14.0%でした。また、「偽陽性」という言葉を聞いたことはあるが、偽陽性となる割合までは知らなかったと回答した人は30代で24.5%、最も割合の多かった60代で42.5%でした。偽陽性に関する知識を正しく持っている人は少ない現状が明らかとなりました(図3-1、図3-2参照)

■高濃度乳房(デンスブレスト)の認知度は10.1%
高濃度乳房(デンスブレスト)は、乳腺が発達しているために乳がん検診でマンモグラフィの撮像をしても、しこりなどの異常所見が見つけにくい乳房のことです。40代頃までの女性に多くみられ、日本人は欧米人に比べて該当する女性の割合が高いと言われています。高濃度乳房(デンスブレスト)について「名前も意味も知っている」人は全回答者のうち10.1%にとどまりました。年代別の認知度は、20代で5.0%、30代で9.0%、40代で11.0%、50代で16.0%、60代で9.5%でした。最もポイントの高い50代でも2割未満であり、高濃度乳房である可能性の高い40代以下の世代では約1割以下と認知度が低い現状が明らかとなりました(図4-1、図4-2参照)

■ホルモン剤の長期投薬治療による生活への影響に関する認知度は18.0%
乳がんは手術後にホルモン剤の投薬治療を5年間以上続ける必要があります。投薬治療中は妊娠・出産、薬の副作用による仕事の効率低下など、仕事や生活への影響が大きい可能性があります。このことを知っていたのは全回答者のうち18.0%にとどまりました。年代別の認知度は、20代で9.0%、30代で12.5%、40代で21.5%、50代で28.0%、60代で19.0%でした。働く女性が増えるなかで、仕事や出産などへの影響が大きいと考えられる若い世代を中心に、関連知識の認知度を向上させる必要性が大きいことが明らかとなりました(図5-1、図5-2参照)

■乳房に関する美容のサービスと乳がんの簡易チェックを受けられるサービスがセットであれば1年に1回以上の頻度でサービスを受けたい人の割合は35.3%
今後の画像診断技術の進歩によって、美しい乳房のカタチを保つためのチェックサービスを提案することで、自然と乳がんの簡易チェックもできるようになる可能性があります。こうした乳房に関する美容と乳がんのチェックを同時に受けられるサービスがあるなら、1年に1回以上の頻度でサービスを受けたいと考える女性は全回答者の35.3%でした。特に30代の女性で最も割合が高く、43.5%が1年に1回以上の頻度でサービスを受けたいと回答しました(図6-1、図6-2参照)

その他の主な調査結果
■40代以上の女性を年代別にみると、24.0~36.5%が2年ごとの継続的な検診受診をできていない(図7参照)
■必要な検診を意識して受診する人の割合は40代以上で約60%だが、2年検診受診率はこれより低い(図8参照)
■乳がんサバイバー ※1 となったとき、勤め先における就業継続への支援が十分と回答した人はいずれの年代でも約1割以下(図9参照)
■乳がんの知識や教育を受ける機会が十分提供されていると答えた人は、どの年代でも、学校教育、かかりつけ医、職場、自治体のいずれについても3.5%以下(図10参照)

※1:がんを体験された方のこと。治療を終えた方だけなく、治療中の患者や、診断されたばかりの方、経過観察中の方なども含む。

3.調査概要

  • アンケート名:「乳がん検診等に関するmif ※2 アンケート調査」
  • 回答者数:1,000名(年齢:20~60代の女性、対象地域:全国)
  • 回答者セグメント:年齢:5セグメント(20代/30代/40代/50代/60代)、職業:2セグメント(会社員・派遣社員/主婦・パート・アルバイト)をクロスした計10セグメントで100名ずつ
  • 調査方法:全国Webアンケート(回答者はmifベーシック調査パネル他で募集)
  • 調査実施日:2020年4月17日~4月21日
  • 調査内容:乳がん検診の受診履歴、精密検査の必要が発覚した際の家族や職場への相談意向、高濃度乳房や罹患に伴う妊娠・出産や仕事の効率低下など関連知識、教育機会の十分性に関する意識の把握
  • 実施主体:MRI(協力:ワコール、Lily MedTech)

※2:生活者市場予測システム(mif):三菱総合研究所の運営する、生活者30,000人、シニア15,000人を対象とした、2,000問からなる国内最大級のアンケートパネルおよび調査システム。

4.今後の予定

乳がんは、35~74歳で罹患する割合が最も高いがんの部位であり、生涯では10人に1人の女性が罹患する病気です。国内では毎年9万4,000人が罹患し、1万4,000人が亡くなっています。
今回の調査で、マンモグラフィ検査による検診受診率が50%に近づく世代がある一方で、いざ乳がんにかかったとき、あるいは可能性があると指摘されたときに適切な意思決定を行える関連知識の認知度の向上や、状況を理解しサポートできる職場環境の整備などは、まだこれからの段階であることが明らかになりました。
乳がんは早期に発見できれば治る確率の高い病気であり、乳がん検診の受診や、治療しながら仕事や家庭生活を続けていくための知識を身に付けていくことが重要です。MRIでは女性の活躍を健康面から支える取り組みを一層推進すべく、継続的な検診受診や乳がん関連知識の認知度向上、職場環境整備などについて、引き続き、ワコール、Lily MedTechとも協力し、研究や提案を行っていきます。

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