ニュースリリース

三菱総合研究所、オルタナティブデータによるナウキャスティングを実証

公的統計に先んじて家計や経済の状況をリアルタイムで把握可能に
2023.3.27

株式会社三菱総合研究所

POINT

株式会社三菱総合研究所(代表取締役社長:籔田健二、以下 MRI)は、家計簿アプリデータやPOSデータを活用して社会・経済の「いま」を可視化するナウキャスティングに関する検証を実施し、一定精度で公的統計の傾向を把握できることを確認しました。これにより、公的統計に1~2カ月先んじて家計や経済の状況をリアルタイムかつ詳細に把握することが可能になります。 

1. 背景・経緯

昨今、デジタル化やテクノロジー進化に伴い、日々さまざまな場所でデータが産み出されています。これらはオルタナティブデータと呼ばれ、容易に利用できる環境が整いつつあります。一方、社会や経済の先を見通すことが難しく、前例主義では乗り越えられない局面が目立つようになりました。

このような状況を踏まえMRIでは、データに基づいて科学的に社会や企業を動かしていく「データ駆動経営」の必要性を提唱しています。この「データ駆動経営」の実現の第一歩として、オルタナティブデータを活用したリアルタイムな状況の可視化、いわゆる「ナウキャスティング」に関する検証を行いました。

2. 検証の概要・特徴

(1) 家計簿アプリデータによる検証

内閣府による委託事業「令和3年度『リアルタイムデータを活用した経済動向分析(家計簿アプリデータ活用)』」において、マネーツリー株式会社の家計簿アプリデータを活用し、精度評価のベンチマークとなるCTIミクロ(世帯消費動向指数)と消費支出額の対前月比推移を比較しました。長期的に見て動きが似通ったものである可能性が示されました。
検証結果①:消費支出額の対前月比 推移
消費支出額の対前月比 推移
注:家計簿アプリデータは「1ユーザー当たり」、CTIミクロは「2人以上勤労者世帯」での消費支出額の対前月比
出所:「経済財政分析ディスカッション・ペーパー・シリーズ 経済動向分析における家計簿アプリデータの活用」(内閣府)(https://www5.cao.go.jp/keizai3/discussion-paper/dp223.pdf)をもとにMRI作成

(2) POSデータ※1による検証

東芝データが保有するPOSデータを活用し、精度評価のベンチマークとなる家計調査と食料品に関する消費支出額の対前週比推移を比較しました。高い精度で傾向が近いことが明らかとなりました。
検証結果②:食料品に関する消費支出額の対前週比 推移
食料品に関する消費支出額の対前週比 推移
注:POSデータは「1ユーザー当たり」、家計調査は「2人以上世帯」での食料品消費支出額の対前週比
出所:東芝データ株式会社 スマートレシート®データ、ならびに総務省統計局「家計調査 家計収支編」よりMRI作成
(「スマートレシート®」は東芝テック株式会社の登録商標です)
検証の結果、二つの検証ともに公的統計と近い挙動を示すことが明らかになりました。公的統計は公表までに1~2カ月のタイムラグが発生する一方、検証に用いたオルタナティブデータはほぼ即時での活用が可能で、公的統計に先んじて家計や経済の状況をリアルタイムで把握可能であることが実証されました。

※1:商品やサービスの販売実績で、購入された商品・サービスの名称や価格、その日時・店舗・個数等が収録されたデータ

3. 今後の予定

今回の検証では、消費に関連するオルタナティブデータを活用し、家計や経済のリアルタイムの可視化が可能であることが実証されました。オルタナティブデータは消費に関するものに限らず、人やモノの移動、サイバー空間での行動、映像や音声等、さまざま存在します。これらを活用することで、例えば、民間の分野ではリアルタイムの需要予測に基づく余剰在庫や欠品の最小化、最適価格設定による利益最大化(ダイナミックプライシング)等、公共分野では迅速・機動的な経済政策(各種給付金)の展開等、意思決定や判断を高度化することが期待できます。MRIは、データを保有する事業者のハブとなり、本知見も踏まえて、これらデータを活用し、社会・企業の課題解決を推進します。

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