ニュースリリース

2019、2020年度の内外景気見通し

減速する世界経済、米中貿易摩擦の激化で強まる不確実性
2019.5.21

三菱総合研究所

POINT

株式会社三菱総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:森崎孝)は、2019年1-3月期GDP速報の発表を受け、2019、2020年度の内外景気見通しを発表いたしました。

日本の実質成長率予測値:2019年度+0.7%、2020年度+0.5%
(前回予測値(3月8日):2019年度+0.7%、2020年度+0.5%)


海外経済

米国は、良好な雇用・所得環境は続くものの、既往の減税効果の一巡や米中貿易摩擦の影響顕在化を背景に、内需は20年にかけて減速を見込む。議会のねじれに伴う予算審議の難航も予想されることから、18年の3%近い高成長から減速し、19年は前年比+2.1%、20年は同+1.9%と予測する。

ユーロ圏は、英国のEU離脱の影響に加え、世界経済減速による輸出・生産の悪化、雇用・所得環境の改善ペース鈍化による消費の減速が見込まれることから、19年、20年ともに、前年比+1%台前半の低い成長にとどまると予測する。

新興国は、米中経済の減速、半導体需要の調整など輸出環境の悪化を背景に、成長減速を見込む。中国は、米中貿易摩擦の激化などの景気下振れ圧力に対し、財政による下支え策が一定の効果を示すとみられるが、成長減速は避けられない。19年は前年比+6.1%、20年は同+6.0%と予測する。


日本経済

19年度の日本経済は、米中経済の減速や半導体需要の調整を背景に輸出は減少する一方、雇用・所得環境の改善持続や消費税増税前の駆け込み需要から内需の堅調が見込まれ、前年比+0.7%と潜在成長率並みの成長を予測する。20年度は、半導体需要の調整一巡により輸出・生産の持ち直しが見込まれるものの、年度後半にかけて増税対策の効果剥落が予想されることから内需の伸びが鈍化し、同+0.5%と減速を予測する。


世界経済のリスク要因

世界経済の先行きの不透明感は強い。20年にかけて緩やかな減速にとどまらず、成長率が大幅に下振れるリスクもはらむ。世界経済の下振れ要因として、注意を払うべきは次の3点である。

①米中貿易摩擦の一段の激化:米中間での通商協議が決裂し、米国が中国からの全輸入品に制裁関税を課す事態に発展すれば、米国は▲0.8%ポイント、中国は▲1.9%ポイント成長率が下振れる可能性がある。米中の消耗戦は、貿易や金融市場を通じて世界経済の下振れ要因となる。

②金融市場のリスク回避姿勢の更なる強まり:米中貿易摩擦の一段の激化などをきっかけに先行きの不確実性が更に高まれば、金融市場においてリスク資産から資金を引き揚げる動きが一層強まるだろう。株安は逆資産効果やマインド悪化を通じて消費や投資の下振れ要因となるほか、国際資金フローの逆流は新興国経済の下振れ要因にもなる。

③世界経済の同時失速:世界GDPの6割を占める米中欧経済が同時に失速するリスクが高まっている。火種は米中貿易摩擦や英国のEU離脱だけではない。中国では既に企業・家計債務が高水準にある。これらの不良債権化が金融機関の信用問題にまで発展すれば、信用収縮が起き中国経済に急ブレーキがかかりかねない。 

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