橋本 CPは資金の流れを変容させることで、「脱炭素に向けた行動」へと行動変容を促すものです。例えば、化石燃料をたくさん消費する活動に課税し、その税収を脱炭素技術開発の促進に充てるといった制度運用が考えられます。需要側のエネルギー利用に関する行動変容は比較的スピーディに効果が期待できるため、脱炭素化で最もポイントになる部分ですが、CPはそのための戦略的な制度イノベーションであると言えます。CPの導入に当たっては、CNに向けた円滑な行動変容を促すため、電力や産業、民生・運輸といった各部門の特性に応じたきめ細やかな制度設計が必要です。
橋本 例えば電力部門には排出量取引制度を導入することにより、卸電力市場を通じて排出枠(排出権)の価格付けを行いながら、石炭火力からLNG火力や再エネに電源構成のウエイトをシフトさせることが可能だと考えています。その際、政府が排出枠を有償で電力部門に配分し、それによる政府の歳入増加分を、電力価格上昇の悪影響の緩和措置に用いるとともに、脱炭素技術開発や普及にも充てることがポイントです。電力価格上昇による悪影響の緩和には、政府歳入増加分を一部の電力需要家に還元することが考えられます。同時に、政府歳入増加分を水素・アンモニア発電や水素還元製鉄と言った脱炭素技術の普及にも用いることが必要です。