三つのキーポイントのうち、時間軸上で最も早期に取り組むべきものは「需要側の行動変容」になる。需要側の行動変容は、従前のエネルギー政策の議論では注目度が低かったが、イノベーションの実現とは異なり比較的早期に実施可能であることに加え、再エネ利用拡大、電力需要の構造変化、省エネ・燃料転換、EV(電気自動車)への転換といった産業・社会構造の転換にもつながることから、非常に重要な対策となる。
三菱総合研究所では行動変容のポテンシャルを分析するため、企業・消費者向けにアンケート調査を実施した。再エネ電力に対しては、7割強の企業、4割強の消費者が「コスト増を許容できる」と回答しており、脱炭素化への社会要請に直面している企業の意識は既に変化してきている。また、同アンケートでは化石燃料から電気への切り替え(電化)として電気自動車への切り替え意向が高まっていること、また、需要施設を移転する意向としてはサプライチェーン上の制約が少ないデータセンターでその検討が進んでいることも示された。これらの結果をもとに、需要側の行動変容によるCO2(二酸化炭素)削減ポテンシャルを試算したところ、約2億t-CO2が削減され、2013年度比では約14%減少との結果が得られた。行動変容の一つ一つは小さな変化だが、これらが積み重なり日本全体で見た場合は相応のボリュームを持つと考えられる。