—— 総合格闘家としてPRIDEやK-1・HERO'Sのリングで、グレイシー一族やピーターアーツと戦い勝利を収め、Martial Combatライトヘビー級王座やROAD FCの初代ミドル級王座と輝かしい戦歴の大山さんですが、引退のきっかけは何だったのでしょうか?
大山 ある試合で不自然な倒れ方をしてしまい、頭部・脳にダメージを受けた感覚をもちながらも、当時現役を続けていました。2014年8月の試合(対戦相手は一慶選手)で、そうした感覚を強烈に感じたため、引退を決意しました。試合で負けて「これで終わりだな」と思ったのはその時が初めてで、その日のうちに引退を発表してしまったのです。しかし、発表してからものすごく後悔しはじめました。この決断は正しいのだろうか、間違えたことをしたのではないかと、自分で怖くなってしまいました。現役中は「不屈の日本男子」「魂の格闘家」などと称されていたこともあり、今までどんなことがあっても立ち上がってきたのに、こんな形の引退でよかったのかと。よく考えた末、ここで身を引くのではなく、仲間たちにも自分のためにももう一度、引退試合としてリング上に立つという意識に変わりました。
—— 試合に負けて引退を決意しそのままリングを去り、引退セレモニーをして終わる選手が多い中、大山さんは、引退表明を撤回し、引退試合としてリングに上がる決意をされます。それは、最後の雄姿を仲間たちに見せ、ご自身の格闘技人生に終止符を打つものだったということでしょうか。
大山 そうです。同年12月6日にパンクラスのリングで引退試合(対戦相手は桜木裕司選手)を実施できたことは幸せでした。この引退試合ができたことで、自分自身の格闘技人生にけじめをつけることができました。この試合で燃焼しきれなかったら、次のキャリアに向けた覚悟を決められなかったと思います。引退試合は、自分自身のけじめだけでなく、仲間たちにも最後の姿を観てもらって、10カウントまでさせてもらえた。そうした節目があるのとないのとでは大違いです。僕はラッキーでした。選手としてのお葬式ができた感じです。未来を見るためにも引退試合をやって、気持ちが切り替わって良かったと思います。