元総合格闘家 大山峻護氏 セカンドキャリアインタビュー(2)

引退アスリートのキャリア成功の鍵

2020.6.9

変化に対応する進化

—— 大山さんにとって、今後の人生で成し遂げたいことは何ですか?

大山 『ファイトネス』の場を他のファイターたちがキャリアを考える機会として活用してもらいたいことと、いろいろなメッセージを織り込んでプログラムを磨いていきたいということの2点です。今はコミュニケーションに重点を置いてプログラムを進行しつつ、お互いの心身を感じ取ってもらったり、プラスのストロークを交換してもらったりということに配慮していますが、常に「変化」と「進化」を意識して取り組んでいます。

—— 「変化」と「進化」ですか。

大山 人は変わっていく生き物だから常に「進化」なんです。この点は自分が人間関係で学んだことが影響しています。人が当初求めていたことは「変化」していきますし、その「変化」にこちらも対応していかないといけません。人は「変化」する生き物なのだということを学んだのは、現役中にやっていたスクールの経験です。スクールに入ってきた人が当初求めていたことは「楽しみ」だったとしても、それが段々「上手くなりたい」に変化して、それがさらに進化して他の道場に行ってしまったりして(笑)。これは参加者のニーズの変化にこちらが応えられなかったからでしょう。こちらも進化し、対応できなかったのが問題だったと勉強になりました。今でもパーソナルな指導をしていますが、「変化に対応するために自分も進化する」ということをすごく大切にしています。

—— なるほど。相手の「変化」を感じ、相手の「進化」に伴って自分自身も「進化」するのですね。

大山 決めつけや固定観念ではなく、「変化」を感じることを大事にしています。例えば、ミノワマン(美濃輪育久氏)が行う『ファイトネス』は、そのキャラクターが持つ、彼なりの色や方法でやればいいのです。そうすれば、ミノワマンの『ファイトネス』となり、「変化」の一つになります。そして「進化」させることが可能になります。プログラムの基本はありますが、参加する人や実施する会社によって変わるのと同じように、今後は、指導する側も、その人流の『ファイトネス』をつくっていってほしい。空気感や伝え方とかを含めて、そういった「変化」は大いにありだと思っています。

—— 『ファイトネス』を譲り渡すことができるかが課題とおっしゃっていましたが、一般的には譲渡するためにトレーナーライセンスをつくるとか、ルール決めをし、マニュアルで固めがちになるそうです。大山さんのお考えは、軸に対しての「変化」であり、それが「進化」という考えで、指導者側の進化も必要という姿勢なのですね。最近、新たに一般社団法人も起ち上げられたとお聞きしました。

大山 2020年2月に一般社団法人You-Do協会を設立しました。これはアスリートと障がいを持つ子どもたちを繋げる場をつくろうと思い、起ち上げたものです。

—— 発足の動機はなんだったのでしょうか。

大山 アスリートの社会貢献を表彰する「HEROs AWARD 2019」に招待された際、柔道の山下泰裕先生が発展途上国との国際交流についてのスピーチをされました。山下先生の「アスリートが社会貢献することは世界平和に繋がっていく。アスリートにはすごい力がある」というフレーズを聞いたときに、稲妻が走り、イベント中に涙が出てくる衝撃を受けました。自分はいつも自分自身のことしか考えていなかった、社会貢献や世界平和のことを考えてこなかった、何をしているのだと思いました。そこで、自分ができることは何かをよく考えた時に、友人や知人に障がい者の方が多いことに気づき、アスリートと障がい者の子どもたちを繋げる場を作ろうと思ったのです。

—— アスリートが一方的に教える場はありますが、同じアクティビティをして同じ喜びを共有する場はほとんどありません。素晴らしい場の提供になりそうですね。ただ、新型コロナウィルスの問題で多くのイベントが自粛になってしまい、自粛期間も長引いていますが。

大山 それも「変化」と真摯に受け止めて、「進化」を目指しています!  多くの方々がテレワークやオンライン飲み会など、オンラインを活用しているので、レッスンもオンラインでできるのではないかと思いました。そこで、まず繋がる仲間に対し「大山峻護の突撃お宅でオンラインレッスンシリーズ」と題して、画面越しの指導をし始めました。反響が良く、私もやりたいという声が多数あがったので、みんなでやろうということになり、現在は「大山峻護のみんなで楽しくオンラインレッスン」に広げています。

—— 常に目の前の人を大事にしようとしている姿勢が素敵ですね。笑顔を届ける伝道者へ進化と思います。
写真
写真:大山氏提供
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