ニュースリリース

内外経済の中長期展望 2015-2030年度

2015.5.28

三菱総合研究所

株式会社三菱総合研究所(代表取締役社長:大森京太、東京都千代田区永田町二丁目10番3号)は、2015-2030年度の内外経済の中長期展望に関するレポートをまとめました。

要旨

【日本経済の展望】

  • アベノミクスが始動して約2年半が経過、経済は緩やかな回復基調にあり、デフレ脱却も視野に入ってきている。とはいえ、金融緩和や財政出動に依存した景気回復は持続的ではない。現在0.7%程度の潜在成長率は2020年代半ばに0.5%を切り、2030年度には0.3%程度へ低下する。実質GDP成長率は2016-20年度1.1%、21-25年度0.7%、26-30年度0.6%と予測する。
  • 成長力の底上げに向け、イノベーションを生み出す力とそれを支える人材育成・雇用制度改革が急がれる。財政健全化も持続的成長の大前提となる。これらの課題を打破するためのトリガーとして、以下の5つを提言する。これらの取り組み次第で1%程度の成長力引上げは可能だ。 

Trigger1:変化に強い人材・雇用制度を創る

人材は経済活力の源泉。日本がグローバル化やICT(情報通信技術)・AI(人工知能)化に適応し成長を続けるためには、人材の質を高める教育改革を加速するとともに、「柔軟性」と「安定性」を兼ね備えた雇用制度を構築するなど、人材を最大限活かす工夫が必要だ。

Trigger2:起業と新規事業創出でイノベーションを促進する

一人当たりGDPを高めるには、起業を増やし新しいビジネスモデルを生み出すイノベーションを促進する必要がある。日本は起業に対する意識や評価が低く、起業家教育などにより地道な改善が必要だ。既存の企業の新規事業創出は、自前主義からの脱却と市場ニーズ起点が鍵となる。

Trigger3:地方の「密度」を高める

地方では、まばらになった人口分布を再び集約化させることを通じ、生産性の向上や行政コストの効率化を促すことが重要。新たなインフラをつくるのではなく、行政機能の集約化や医療提供体制の再配置で、住民の生活の質(QOL)向上につなげる視点が求められる。

Trigger4:地域資源の最大活用で自律的な地方創生を促す

地方圏から大都市圏への人口流出抑制の鍵は「就業機会」の創出。地域外からの需要獲得と地域内での経済循環促進の両輪で就業機会を創出し、地域の自立性を高めていく必要がある。ICTの普及による距離の壁の解消など、ポジティブな環境変化は既に起こりつつあり、それを地方創生に結びつけるには、地域が自ら考え変革を続ける必要がある。

Trigger5:社会保障の給付と負担の構造を改める

日本の社会保障制度は、超高齢化社会で制度疲労が顕在化。特に医療・介護費の抑制が急務であり、過剰なサービスの見直しや「自助」の範囲拡大などが必要だ。一定の経済成長を考慮しても、2020年度の基礎的財政収支黒字化は困難であり、社会保障制度改革の推進に加え、消費税率の引上げなど歳入面での対応も求められる。

 

【海外経済の展望】

  • アジア新興国では中間層拡大や都市化進展を伴う経済成長が続き、世界GDPに占めるアジアの比率が高まる。中国が「安定」成長を続けられれば、2030年までに中国のGDPが米国を抜き、世界経済の「中心」は米国からアジアへとシフトするだろう。しかし、中国が安定成長に移行するためにクリアすべき課題は多い。中国経済の動向が世界経済の成長シナリオを大きく左右しよう。
  • 米国は、金融危機後の構造調整による下押し圧力が緩和するなか、2%程度の安定成長を続けると予想する。欧州(ユーロ圏)は、バランスシート調整の長期化から低成長が続くであろう。中長期的にも、労働力減少が進むため、1%弱程度の成長にとどまるとみる。 

内外経済の中長期展望 2015-2030年度

全文(訂正版)[3.4MB]
【目次】
Ⅰ.総論 [1.2MB]
Ⅱ.日本経済 [2.3MB]
1.日本経済
2.日本経済の再生に向けて
Ⅲ.海外経済
(1)中国経済
(2)ASEAN経済
(3)インド経済

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