ニュースリリース

デジタル社会における分散協調エコシステムの在り方に関する共同研究成果を公表

2023.9.28

株式会社三菱総合研究所
ジョージタウン大学

POINT

株式会社三菱総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:籔田健二、以下 MRI)と米国ジョージタウン大学 Department of Computer Science 松尾真一郎研究教授は、共同研究を行い、安心・安全・公平なデジタル社会を実現するため、多様な主体間のデータ連携を活性化する分散協調エコシステムの将来像や、応用産業における実装シナリオを検討しました。

1. 背景

デジタル社会において、多様な主体間での活発なデータ連携を実現するためには、重要なデータを安心して拠出することのできる環境が不可欠です。しかしその実現に向けては課題が山積しています。

消費者向けの領域では、少数の巨大プラットフォームに機能やデータが集中し、ガバナンスの不透明さに対する消費者の不安が高まっています。一方で、産業向けの領域では、特定事業者にデータが集中することやライバル企業へデータが渡ることへの警戒感もあり、幅広い主体が参加できるプラットフォームの形成は遅れています。

こうした問題意識から、MRIと松尾真一郎研究教授は、多様な主体間のデータ連携を活性化する分散協調エコシステムの将来像や、応用産業における実装シナリオについて共同研究を実施しました。

2. 主な研究成果

分散協調エコシステムの要件と実装イメージ

2022年の共同研究では、デジタル社会における信頼(トラスト)の概念を整理した上で、マルチステークホルダー型ガバナンスに基づく分散協調エコシステムの必要性を論じました。今回の共同研究では、昨年の成果を土台として、主に産業データ流通の分野で分散協調エコシステムを実現するための基盤となるデータ連携プラットフォームの要件と実装イメージを整理しました。

インターネットは多様な主体間でのビジネスプロセスの信頼を確保する機能が不十分で、産業データ流通の活性化のためにはこれを補うことが重要です。企業間取引では各社が取引データを交換する際に改ざんや偽装、欠損や不整合が生じないこと、またデータを自分が選んだ相手にのみ開示したり、不当利用をトランザクション記録から検証できることが不可欠となります。データの集積・連携により多大な価値を創造しつつ、その価値を特定の事業者に集中させないことも重要な要件です。こうした複合的な要請に応えるためには、パブリックブロックチェーンの活用などを通じて、オープンで非中央集権的な性質を持つ分散型データ連携プラットフォームを実現することが有力な解となります。

分散型データ連携プラットフォームの実装シナリオ

分散型データ連携プラットフォームの実装は、先行する金融分野を除けば、まだ端緒についたばかりです。共同研究では、非金融分野での普及に向けた4つのシナリオを検討しました。
非金融分野での分散型データ連携プラットフォームの実装普及に向けた4つのシナリオ
非金融分野では、暗号資産のような利益を生むビジネスモデルがまだ見えていません。期待されるのが、資源循環管理や温室効果ガスの排出量管理など、規制対応の領域です。規制対応のため多様な主体がデータ連携し改ざん不能かつ検証可能な形で記録を残すには、パブリックブロックチェーンが適しているからです。規制対応を入口として、企業間のデータ連携を通じた取引自動化による生産性向上や、地域のデータ連携によるサービス高度化・新ビジネス創出などに展開するロードマップを描くことが重要です。

ブロックチェーンベースのデータ連携プラットフォームは、生成AIにおけるデータの真正性・信頼性の確保を通じて、生成AIの普及発展にも寄与すると期待されます。

データ連携は本質的にグローバルな性質を持ちます。MRIと松尾真一郎研究教授は、分散協調エコシステムの課題解決に資する技術開発や実証事業における日米連携の重要性を確認しました。

3. 今後の展望

今後、MRIおよび松尾真一郎研究教授は、本共同研究の成果を踏まえ、分散協調エコシステムを構成する具体的な技術やユースケースの検討・実証等を進めていく予定です。

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