過去30年、日本の技術革新は進みイノベーションが生まれる環境は整備されてきましたが、新たな技術の社会への適用は進みませんでした。日本の社会経済の長期停滞は、技術のイノベーションを社会実装できなかったことが一因ではないでしょうか。その背景には技術開発から社会実装に至る過程で「組織内の分断」「政府と企業の分断」「経営と現場の分断」「社会ニーズと商品・サービス内容の乖離」などさまざまな分断があると考えられます。
これらの分断された関係を改めてつなぎ合わせ、技術のイノベーションを社会実装に導くことこそ、日本が新たな競争力を回復するために必要な「新・戦略」です。
当社は、多様な人や組織のつながりによって価値を創出する未来のコミュニティを「共領域」と名づけました。現代の複雑化した社会で、細分化された組織や社会が個別の最適を追求するシステムは限界を迎えています。これらを克服するために、共領域を形成して複合的な「コレクティブ・インパクト」を実現することが、日本を動かす処方箋です。
日本および日本企業には社会実装を実現して発展する力がまだ十分にあります。本書ではその道筋となる考え方を記し、参考となる事例を豊富に示しました。