マンスリーレビュー

2018年3月号トピックス1スマートシティ・モビリティ情報通信

民間によるIoT投資を活用した水道サービス

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2018.3.1

次世代インフラ事業本部大熊 修司

スマートシティ・モビリティ

POINT

  • 人口減少に伴い、水道サービスの事業効率が悪化している。
  • 民間のIoT投資を活用した事業構造の転換が有効な手段。
  • 水道事業の民間移管合意には、住民との対話継続が必要である。
地域の人口減少が進む中、水道料収入の減少は免れない。このままでは浄水場施設の老朽化への対応もままならない。水道インフラの施設は耐用年数が数十年と長く、浄水場の規模を人口動態に合わせて柔軟に縮小することは難しいからだ。さらに、水道料金を値上げしようにも、住民の同意を得ることは簡単ではないだろう。こうしたジレンマの中で、水道インフラ・システム改革は先送りされ続けている。

課題解決に向けて、民間事業者が主体的に事業運営を行うコンセッション(公共施設等運営権)による事業手法に期待が高まっている。民間事業者が蓄積している技術や資金を活用し、水道サービスを効率的かつ安定的に継続できる事業構造へ転換することを目的としている。とりわけ人口密度の低い地域では、民間の生産性向上ノウハウを地域の水道事業に活かして省力化を図りたい。これらイノベーションの実現には、民間のIoT技術の活用が必須となるだろう。

IoTの活用例としては、メンテナンスの対象となる施設や設備に異常を検知するセンサーを取り付け、遠隔監視や自動制御などのシステムを構築することがある(図)。原水の水質情報、施設の稼働状況などをもとに、過去の運転履歴から、最適な自動運転を行うことが可能となる。天気・気温・降水量などの外部情報も監視精度を高める上で欠かせない。これらデータの蓄積があって初めて、分散型の小規模な処理施設を無人で運用できるようになる。

問題は、住民といかに合意形成を図るかだろう。「飲み水である水道事業を民間に任せることは危険」といった漠然とした懸念は根強い。住民に対して安定した水道サービスを提供することがコンセッション参入の大前提とはいえ、住民の不安を完全に払拭(ふっしょく)することは困難だ。地域における水道システム改革が、住民・行政・民間事業者の全てにとって大きなメリットであることを丁寧に説明し、住民の不安を解消できるよう対話を続けることが求められる。インフラ施設の老朽化対策は待ったなしだ。今すぐにでも住民との対話を始める必要があるだろう。
[図]民間のIoT投資を活用した水道サービス