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2018年3月号トピックス6経営コンサルティング

生産性向上に不可欠な「人的投資」と「組織変革」

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2018.3.1

政策・経済研究センター酒井 博司

経営コンサルティング

POINT

  • 働き方改革の根本は中長期にわたる生産性向上にある。
  • 日本のR&D投資水準は米英と並ぶが人材・組織変革向け投資は低め。
  • 人的資本向上と組織変革の重要性を再認識すべし。
働き方改革の根本は、企業の生産性を中長期的に向上させる点にある。経済協力開発機構(OECD)は、生産性向上には研究開発や経営組織改善、人材の質向上といった継続的なイノベーション活動による無形資産蓄積が欠かせないと指摘している※1

OECD諸国では企業の無形資産を、研究開発(R&D)を軸とした投資で蓄積される「革新的資産」、コンピューターやソフトウエア、データベースからなる「情報化資産」、そして人材投資や組織変革、ブランド力構築などで培われる「経済的競争能力」の三つの類型に分け、同じ基準で計測している※2

日本は製造業偏重※3ながらR&D投資の水準自体は高い。2012年時点で国際比較すると、日本の革新的資産のGDP比は6%と、米国の5%や英国の4%をしのぐ。

しかし、人材開発や組織変革のための投資はおろそかになっているようだ。経済的競争能力のGDP比は米英が7%程度なのに対し、日本は3%にとどまっている。時系列でみると、日本企業が人的資本や組織変革をR&Dの後回しにしたツケの大きさが分かる。

日本の108産業を分析すると、人的資本や組織変革によるストックと、創出された付加価値には一貫して強い相関がある。だが、1998年以前と比べると、同年以後は人的資本・組織変革投資と付加価値の伸びが、ともに鈍化していることが分かる(図)。90年代後半にリストラ圧力が強まったことを契機として、人的資本・組織変革への投資が減少に転じ、付加価値の伸びも停滞している。

2017年3月に政府がまとめた働き方改革実現会議の実行計画には、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の導入が盛り込まれた。しかし、生産性向上に不可欠な人的資本の向上や組織変革には、あまり言及されていない。

政府も産業界も、人的投資の重要性を再認識する必要がある。単に投資額を再び増やすだけでは不十分ではないだろうか。イノベーションを通じて多様な人材が育成されるとともに、そうした人材が思う存分活躍できるように、組織の変革が進むことを期待したい。

※1:OECD, Supporting Investment in Knowledge Capital, Growth and Innovation, Oct. 2013.

※2:OECDの定義の元となった論文が、Corrado, C., Hulten, C., and D. Sichel (2009), “Intangible Capital and U.S. Economic Growth”, Review of Income and Wealth, 55(3), 661-685.である。日本の計測結果は経済産業研究所のJIPデータベースに記載されている。

※3:MRIマンスリーレビュー2017年7月号「非製造業の研究開発が新市場をもたらす」参照。

[図]業種別に見た人的資本・組織変革ストックの伸びと付加価値の伸びの比較

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