前回は、人的資本の再建に向けて、中間管理職を含むミドル層の役割の重要性を指摘した。ミドル層に求められる役割とはどのようなものだろうか。
経済産業省が発表した「人材版伊藤レポート1.0」および同「2.0」では、「人材は『管理』の対象ではなく、その価値が伸び縮みする『資本』」として扱うことを要請している。同レポートでは、人材を活かし育てるために求められる経営行動を、3つの視点と5つの要素=「3P・5Fモデル」で整理している(図表1)。
経済産業省が発表した「人材版伊藤レポート1.0」および同「2.0」では、「人材は『管理』の対象ではなく、その価値が伸び縮みする『資本』」として扱うことを要請している。同レポートでは、人材を活かし育てるために求められる経営行動を、3つの視点と5つの要素=「3P・5Fモデル」で整理している(図表1)。
図表1 人材版伊藤レポートの骨子
本モデルでは、「経営戦略と連動した人材戦略の実行」が最も重要とされている。その実現のために、経営層、特にCHRO(Chief Human Resource Officer、最高人事責任者)の役割が強調されているが、中間管理職の役割、すなわち現場への浸透・実装も重要である。また、管理職でないミドル層にも、その経験値の高さを生かしたリスキリング推進や、多様なメンバーを先導するリーダー的な役割が期待される。仮に3P・5Fモデルに基づいた施策を経営層が完璧にあつらえたとしても、ミドル層が機能していない状態では、あるべき人的資本経営が成り立たないことは明らかである。