マンスリーレビュー

2022年4月号トピックス1経営コンサルティング人財

全社一体で実現するコーポレートガバナンス

2022.4.1

経営イノベーション本部瀧 陽一郎

経営コンサルティング

POINT

  • トップダウン型のガバナンスは機能不全を招きやすい。
  • 「自分事化」「心理的安全性」を育む組織風土が鍵。
  • 社員参画での経営理念策定はガバナンスの実効性をさらに高める。

なぜガバナンスが機能しないのか

企業は、ESG※1や社会的責任、資本効率などの観点で、多様なステークホルダーからガバナンス強化を迫られている。東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コード※2全原則適用はその1つであるが、comply(遵守)すれば終わりではなく、実効性が重要なのは言うまでもない。ガバナンス実現の責任は経営層にあるものの、不確実性が高く、正解がなく、変化が激しい事業環境下では、トップダウンで仕組みを整備し号令をかける方法だけでは実効性を担保することは難しい。

ベストプラクティスとされる仕組みを導入した企業でも低成長や不祥事が続くのは、ガバナンスに対する社員の理解や共感が不十分であり、仕組みが自律的に機能していないからではないか。

社員が安心して異論を言い合える組織風土

社員がガバナンスの理解を深め、自分事として取り組み、仕組みが自律的に機能するためには、上司や専門家に対しても忖度をせず、安心して異論やBad Newsを共有し、素朴な疑問も言え、ネガティブな評価を気にせず行動できる組織風土が不可欠である。いわゆる「心理的安全性」の確保だ。

企業の品質問題などの調査報告書では、経営層や上司、そして(親会社がある場合は)親会社に悪い情報を上申できない組織風土がガバナンスを悪化させる真因として度々指摘される。「風通しの良い組織文化なくしてガバナンスなし」と言っても過言ではない。

コロナ禍でのリモートワークや人材流動化、ワークライフバランスなどがガバナンスに悪影響を与える可能性もある。このままでは会社に対する社員の帰属意識や求心力が弱まり、自発的な言動の動機を減退させかねない。

だからこそ、社員一人ひとりが自社で働く意味を問い直し、日々現場で直面するさまざまな機会や脅威を自分事として捉えなければならない。そして経営層、社員が互いを意識的に尊重し、意見を言い合える状況が醸成され続けることが、ガバナンスの実効性を高める上で不可欠だ。

社員主導の経営理念策定でのガバナンス向上

近年、「組織がよって立つ不変の軸」としての経営理念、パーパスの重要性が増している。若手・中堅世代の求心力を強め、組織の風通しを良くする観点でも、経営理念やパーパスの策定、そして継続的な見直しを社員参画、社員主導で進めることが効果的だ。

例えば、「自分たちが実現したい未来社会の姿」「その中で自社が果たす役割」「現在の経営理念はその実現にかなった内容か否か」を全社で自由闊達に議論し理念案を策定する。経営陣が社員を信頼し、議論の行方を任せる姿勢で臨めば、さらに効果は高まる。求心力や心理的安全性が高まれば、社員は事業機会やリスクを能動的に察知し、その対応や情報共有を自分事にでき、結果としてガバナンスが継続的に機能する組織への変革が加速するだろう※3

※1:Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)。 

※2:金融庁と東京証券取引所が共同で策定した法的拘束力のないガイドライン。

※3:当社でも試行錯誤ではあるが、創業50周年を機に社員全員参画での経営理念策定を実践した。

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