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2018年3月号トピックス5デジタルトランスフォーメーション

RPAを「野良ロボ」にしない

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2018.3.1

コンサルティング部門 経営イノベーション本部佐々木 康浩

デジタルトランスフォーメーション

POINT

  • 自動で大量に業務処理を行うソフトウエア「RPA」が企業に浸透しつつある。
  • 風潮に流されて導入を進め、保守が行き届かない「野良ロボ」になる例も。
  • 実装・運用基準を定め、技術進化に合わせて定期的に見直しを。
ロボットが仕事を肩代わりしてくれるかのように、コンピューター上の定型業務を自動で大量に一括処理するソフトウエア「RPA(Robotic Process Automation)」が普及しつつある。AI技術を使うことで、従来であれば人間にしかできないと思われていた複雑な作業も行える。主要な金融機関が業務自動化の手法として採り入れ、大手広告代理店の電通も、長時間労働を是正する切り札として導入を進めている。経済誌を中心としたメディアに採り上げられる回数も増えてきた。

RPAには事務効率化や働き方改革につながる以外にも、さまざまな効用がある。従来であれば過大な投資によってシステムを構築しなければ不可能だった業務に適用することで、コストを大幅に節減できる。また、人の手間や負担を軽減して情報収集やレポーティングの頻度も増やせることから、経営判断の高度化にもつなげられる。

ただし、導入効果を最大化するには、あらかじめ中長期的な計画を立てておくことが不可欠だ(表)。大量の一括処理を要する業務がないにもかかわらず、無計画にRPAを導入して、無駄な投資をしてしまった企業が現れている。

導入に関してだけではなく、運用していく中で弊害も出てきている。適用範囲が広がって数が増えすぎた結果、管理担当者が不明となって保守されないRPAが、放置されたままメール送信やファイル操作などの処理を勝手に行う「野良ロボ」と化している。また、処理する計算の結果が間違っていることに会社が長い間気づかず、経営判断のミスを引き起こしかねなかったケースも報告されている。

野良ロボに手をかまれないようにするには「首輪」、つまり一定の実装・運用基準を用意するしかない。情報システム向けほど堅牢なものである必要はない。内部統制において、表計算ソフトやワークフローに対して策定したものと同類のものだ。ただし、技術の進化が早い領域であることから、実装や運用の基準は常に見直すことが肝要である。モニタリングや定期監査を実施して、チェック体制に不備が生じないようにすることも忘れてはならないだろう。
[図]PRAの導入・運用で見られる問題点と解決策の例

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