マンスリーレビュー

2021年1月号トピックス4スマートシティ・モビリティエネルギー人材

福島から始める国際教育研究拠点の挑戦

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2021.1.1

スマート・リージョン本部柳川 玄永

スマートシティ・モビリティ

POINT

  • 国際教育研究拠点は福島県における第2期復興・創生期間の目玉の一つ。
  • 「先端研究」と「産業振興・地域貢献」を同時に満たすことがポイント。
  • 国際教育研究拠点により、福島発の地域創生のフロントモデルを。
東日本大震災の発災から間もなく10年がたつ。この間、除染をはじめとした福島県の環境再生は大きく前進したものの、産業などの地域再生はいまだ道半ばである。こうした中、第2期復興・創生期間が始まる。その目玉の一つが福島県浜通り地域に設置が予定されている「国際教育研究拠点」である。

国際教育研究拠点の構築については、2020年6月、復興庁の「福島浜通り地域の国際教育研究拠点に関する有識者会議」が産学官連携による新産業創出や人財育成などの観点から、「国際教育研究拠点に関する最終とりまとめ」として公表した。この最終とりまとめを踏まえて検討を行う政府においては、ロボット・IoTなどの研究テーマをはじめとする「先端研究」に関する議論が交わされる一方で、地域の産業・経済に対する「波及効果」も今後の論点となろう。

これまでの事例を踏まえると、「先端研究」を地域へ波及させるには、地域の特徴や強みを勘案した適切な研究テーマ設定や、研究成果を受容する地域産業基盤の育成が不可欠である。「先端研究」と「産業振興・地域貢献」という要件を同時に満たすには、地域のニーズを十分に把握し、自治体の産業振興施策などとも連携しつつ、中長期的に日本・世界にも貢献しうる研究に取り組むことが求められよう(図)。

検討は緒に就いたばかりだが、目の前の課題を解決する以上に、地域の将来を踏まえた課題解決や波及を意識したテーマ設定・機能を備えるべきである。そのための先端研究でなければならず、地域復興や社会実証・実装の側面においても、先端性を発揮すべきである。

その上で、日本の地域課題解決、ひいては世界の持続可能性に貢献する成果を生み出す研究テーマであることが望ましい。福島県内の各種実証フィールドや既存施設との連携、さらには自治体などの協力のもと、これらの高いハードルを乗り越えられるかが、国際教育研究拠点の成否のポイントであり、最先端技術と産業波及・地域波及を両立させた「福島発の地域創生のフロントモデル」としての姿を期待したい。
[図] 国際教育研究拠点が目指す領域と社会貢献の展開イメージ