マンスリーレビュー

2021年1月号トピックス6経済・社会・技術

コロナ禍で社会課題はどう変わったのか

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2021.1.1

未来共創本部玉川 絵里

経済・社会・技術

POINT

  • イノベーションで解決が期待できる社会課題リスト2020年度版が完成。
  • コロナ禍で生じた課題解決のためのオープンイノベーション活用が加速。
  • 当社50周年研究と連携して「新しい豊かさの追求」の観点も追加した。
当社が事務局を務める未来共創イノベーションネットワーク(INCF)※1が毎年編さんしている「社会課題リスト」の2020年度版が完成した。世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う社会情勢激変を踏まえ、新たな社会課題を大幅に追加した。

INCFが注目する6分野にも、コロナ禍は広範かつ分野横断的に多大な影響を及ぼした(表)。さまざまな産業が打撃を受け、外出自粛によるフレイル(加齢に伴う心身の活力低下)のリスク増大や教育格差拡大など新たな問題が生じた。一方で、既存の社会課題解決がコロナ禍で加速するケースもあった。オンライン診療の拡大やテレワークの普及、オンライン教育の充実などはその好例である。

さらに、コロナ禍で生じた課題解決にオープンイノベーションで取り組む事例も、多くの分野で見られた。例えば、感染者との濃厚接触を匿名で確認できるアプリ「COCOA」※2は、多くの人を巻き込んで迅速かつオープンに開発されたソフトウエアを中核としている。また、東京都公式の新型コロナ特設サイトは、一般社団法人のコード・フォー・ジャパンが発起人となり、オープンソース形式で開発された。

当社の50周年記念研究と連携して、「新しい豊かさの追求」の観点を追加したことも、2020年度版の大きな特徴である。例えば、コロナ禍で食事中の会話が制限される中でも、食を題材としたコミュニケーションの機会をもつことで家族や友人の幸福度を高めることができる。学校教育では、対面の公的教育だけでなく、ITを活用したバーチャルな学習環境など、新たな学習機会と環境を提供していく重要性を強調した。以上のように、問題に取り組み課題を解決する(マイナスをゼロに)だけではなく、理想の未来(新たなプラス)を創り出すための道筋も提示した。

同リストに掲載したさまざまな社会問題・課題や解決への糸口(技術動向・規制動向)を、社会課題解決型事業を創出するヒントとしてご活用いただきたい。従来以上のスピードで変革が求められるウィズコロナ時代には、オープンイノベーションの重要性がますます高まっている。その取り組みの一助となることを願っている。

※1:2017年発足。「社会課題をイノベーションとビジネスで解決」することを標ぼうして、企業会員や国内外の専門家・有識者で構成。
https://incf.mri.co.jp

※2:厚生労働省が開発した新型コロナウイルス接触確認アプリ(COVID-19 Contact Confirming Application)。

[表] 新型コロナウイルス感染症による社会課題の変化
2020年度版社会課題リストのダウンロードはこちらからお申込みいただけます。
https://incf.smktg.jp/public/application/add/344