シェール革命の影響を最も受ける産業の一つとして、化学産業がある。すでに米国では、シェールガス開発の拡大と、それに伴う天然ガス価格の低下が基礎化学品の生産に変化を与えつつある。日本の化学産業も、各社が事業戦略の見直しを求められており、商社等が北米でのシェールガス開発に乗り出すなどの動きも出ている。
シェール革命が日本の化学産業にどのような影響を与えるかを検討した。
シェール革命が日本の化学産業にどのような影響を与えるかを検討した。
企業 | 場所(州) | 生産能力 (万トン/年) |
生産開始 (年) |
---|---|---|---|
ダウ・ケミカル(米) | ルイジアナ | 36 | 2012 |
テキサス | 150 | 2018 | |
シェブロン・フィリップス ケミカル(米) | テキサス | 150 | 2017 |
エクソン モービル(米) | テキサス | 150 | 2017 |
台湾プラスチック(台) | テキサス | 100 | 2017 |
ルイジアナ | 120 | FS調査中 | |
ウエストレイク・ケミカル(米) | ルイジアナ | 10 | 2014 |
サソール (南ア) | ルイジアナ | 150 | 2020 |
ライオンデルバゼル(蘭) | テキサス | 90.6 | 2014~2017 |
オキシケム(米)+ メキシケム (メキシコ) | テキサス | 55 | 2017 |
シンテック(日) | ルイジアナ | 50 | 建設許可申請中 |
ロッテ(韓)+アクシオール(米) | ルイジアナ | 100 | 2018 |
出所:各種報道から三菱総合研究所作成
変化 | ■ 米国でシェールガスの生産が拡大し、新たなインフラ需要が生まれている。 |
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■ 米国で天然ガスからの化学品製造が拡大し、安価なエチレンが生産されるようになる。 | |
機会 | ■ シェールガス開発に用いられる素材の市場が拡大している。 |
■ 製造拠点を米国に建設すれば、安い原料の恩恵を受けることができる。 | |
■ 天然ガスから生産できないブタジエン、ベンゼン・キシレン等が供給不足となるため、日本からの輸出機会が拡大している。また、新たな製造技術による参入機会が生まれている。 | |
脅威 | ■ 日本国内で生産されるナフサ由来のエチレンやその誘導品の競争力が低下する。 |
出所:三菱総合研究所
1)U.S. Energy Information Administration(EIA),“Annual Energy Outlook 2014”(2014年)
2)石油化学工業協会,“主要製品のメーカー別生産能力 エチレン”(2012年)
3)American Chemistry Council,“Shale Gas, Competitiveness and New U.S. Investment: A Case Study of Eight Manufacturing Industries”(2012年)
※1:熱量の単位。1BTUは1ポンドの水の温度を1度上昇させるのに必要な熱量を表し、MMBTUは百万BTUである。
※2:シェール開発では、高圧の水を坑内に注入して地層に割れ目を作る。圧入される水には、酸、摩擦低減剤、乳化剤、ゲル化剤などの薬剤が添加され、これらの薬剤をフラクチャリングケミカルという。
※3:樹脂で被覆された砂。
※4:原資料では、“Chemicals(excluding pharmaceuticals)”と“Plastic & Rubber Products”を別の産業として扱っているが、ここでは両者をあわせ広義の化学産業としている。
※5:2015~2020年の期間中の天然ガス価格が2000~2008年の平均価格より15~23%低下するとの仮定に基づき試算されている。