東日本大震災の後、各地で地震や地下水の異変、火山の噴火などが発生したことから、日本は地殻活動の活発期に突入したのでは、という専門家の見方が報道されている。実際はそんなに簡単なことではないようで、例えば、先日毎日新聞が公開した火山学者へのアンケート結果では、東日本大震災前後に日本列島の火山活動は活発化したのかという問いに対して、3割近くは「活発化している」と回答したものの、4割超は「変わっていない」と回答したとのことである(10/18毎日新聞)。産業技術総合研究所(産総研)活断層・火山研究部門の山元孝広総括研究主幹など、むしろこれまでの100年間が平穏すぎたのではとの専門家意見もある。いずれにせよ、地震大国・火山列島である日本では、全国どこでも災害に対する備えの強化は急務であるということであろう。
首都直下地震、南海地震に対する危機意識も高まりつつある。平成27年2月に国の地震調査研究推進本部が発表した「これまでの活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」では、M8~9クラスの地震発生確率“10年以内20%、30年以内70%”という数字は据え置きであったが、前回の当該地震発生からの経過時間と平均発生間隔との比率である地震後経過率は0.78に達した。首都直下でM7クラスの地震が発生する可能性も30年間で70%と評価されており、「いつ発生してもおかしくない」状況は続いている。
豪雨被害も注目されている。今年9月、茨城県下の鬼怒川流域で堤防が決壊し、5,000軒近くの床上浸水が発生して3人が死亡した、この洪水被害は、100年確率を超える降雨による越水が直接の堤防決壊原因ではないかと言われている。
こうした多様な自然災害リスクの高まりを受けて、防災・減災対策の展示は、災害発生時の実践的な対応に向けた製品・サービスの紹介に力が注がれていた。
地方自治体向けの対策として目立ったのは、防災情報集約・共有システム、防災訓練システムなど、ICTを活用した防災マネジメント支援サービスである。NTT、パナソニックなど大手企業による情報システムに加え、より小さな企業による、オープンソースによる普及しやすさを狙ったシステムも出品されていた。
ドローンを活用した災害情報収集システムも今回の特徴である。鬼怒川水害の際にも、国土地理院がドローンによる浸水域の情報収集を行ったが、今後はドローンによる情報収集や災害情報収集システムとの連動が、地方自治体レベルにおいてもスタンダードとなる可能性がある。
出展物の中には個人向けの防災シェルターなども見られた。災害被害を軽減し、社会活動・生産活動や個人の生活の早期回復を図る、「地域防災レジリエンス」の向上には、公共だけでは人的リソース、資金、タイミングなどさまざまな面で限界がある。今後、行政が地域の企業とどのように協力していくのか、また、個人の参加する自助・共助とをどう実現し、行政の活動と強調させていくのかは大きな課題である。東京の防災を語るシンポジウムに参加していた森ビルの河野雄一郎取締役常務執行役員からの報告では、ビル入居者だけのための防災ではなく、街と共存する防災に取り組む姿勢が紹介されていた。企業などと協力しながら、街や地域としての一体的な防災機能をどう高めていくのかも、今後の行政の課題である。