経済成長には何が必要か。その分析を行う際に、出発点となるのは生産関数の考え方である。生産関数は経済成長の要素を①資本、②労働、③その他の要素の3つに分解する。工業製品の生産に例えれば、①は生産を行うための各種機械、②は労働者の人数、③は知識や技術進歩を広く体現する部分であり、IT(情報技術)導入などによる生産・在庫管理の改善や、企業組織変更による効率化等が含まれる。上記の考えのもと、一般的に用いられるのは以下のようなコブ・ダグラス型生産関数である。
ここで、Yは付加価値、Lは労働、Kは資本ストック、λは一定の率で成長するとみなした全要素生産性(③に相当)である。α、βはそれぞれ労働、資本の弾力性であり、例えば労働力が1%増加すれば、Yはα%増加すると解釈する。なお、通常は規模に関する収穫一定(α+β=1)の仮定を置く場合が多い。日本のマクロ統計を用いると、αは0.5~0.6程度、βは0.4~0.5程度、λは0.5%程度と推計される。この数値に、各生産要素(資本、労働、全要素生産性)の今後の動向を当てはめると、経済が無理なく達成できる成長率である「潜在成長率」を計算することができる。三菱総合研究所が4月に公表した「内外経済の中長期展望」では、少子高齢化の進展を背景とする労働力人口の減少の影響が強く、自然体では、潜在成長率は2020年度までは0.7%程度、2030年にかけては0.4%程度にまで低下することが予測されている。そして、成長力の底上げを図るには、全要素生産性の向上に依存せざるを得ない。