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エネルギーハーベスティングが拓くIoTの世界

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2017.1.20

政策・経済研究センター清水紹寛

経済・社会・研究開発

エネルギーハーベスティングとは

 ハーベストとは「収穫」を意味する。身の回りにある熱や振動などさまざまな形態の密度の低いエネルギーを「収穫」して電気エネルギーに変換する技術が、エネルギーハーベスティングである。比較的古くからある技術で、例えば、太陽光で充電する腕時計や電卓はエネルギーハーベスティング技術を活用した製品として既に普及している。

 記憶に残る、2006年度から2008年度にかけて行われた東京駅での床発電の実証実験もエネルギーハーベスティングの一つだ。改札口に圧電素子を埋め込んでおき、駅利用者がその上を歩行することによって発電する。乗降客の多い日には1日当たり940kW秒の電力量が得られたという。

 エネルギーハーベスティングが対象としているのは、未利用の微弱エネルギーである(表1参照)。これまで活用できなかったエネルギーを取り出すことに大きな意味があるが、微弱電力で動作するデバイスがあってこそ活かせる技術で、消費電力がミリワット、マイクロワット、さらにはそれ以下のナノワット、ピコワット単位のデバイスが登場することによって、エネルギーハーベスティング技術の利用範囲も拡大する。
表1 エネルギーハーベスティングで利用可能なエネルギー源の例
表1 エネルギーハーベスティングで利用可能なエネルギー源の例
出所:「エネルギーハーベストおよびマイクロバッテリーの研究開発動向と応用」(2009年12月)株式会社カネカテクノサーチ等をもとに作成

今、なぜエネルギーハーベスティングか

 エネルギーハーベスティングが今、特に注目されているのは、センサーネットワークの世界である。多数のセンサーがネットワークを介してつながり、大量の情報(ビッグデータ)を収集・活用できる可能性が見えてきた。エネルギーハーベスティング技術によって、いわゆるIoT(Internet of Things)が実現されるのだ。

 センサーにエネルギーハーベスティング技術を取り入れれば、電力コストがかからなくなるのに加え、電力を供給する配線が不要になって工事コストも低減し、センサー設置の自由度が増す。電源が電池である場合には、もともと電力配線は無いが、電池交換が不要になり、その分の保守コストが抑えられる。

 有線の通信技術を活用しているセンサーでは、電力配線をエネルギーハーベスティングに置き換えるだけでなく、通信配線を無線化する必要がある(図1参照)。実はこれが問題で、電波を空中に飛ばすために電力が消費されるが、センサー自体の消費電力を落とすよりも、この電力を削減する方が難しい。また、無線化することで、信頼性(有線並みの信頼性を確保することは容易ではない)、応答性(無線通信は有線通信に比べ、一般的には時間がかかる)、セキュリティー(無線通信は有線に比べて盗聴されやすい)にも対策が必要となる。
図1 配線をなくすための無線化のイメージ図
図1 配線をなくすための無線化のイメージ図
出所:「エネルギーハーベスティング」(2014.10.25)日刊工業新聞社

センサーネットワーク、それを支えるエネルギーハーベスティングに期待される未来

 エネルギーハーベスティングによって形成されたセンサーネットワークはどのような未来を拓くのか。エレベーターや自動販売機、建設機械などにはモニタリングを目的として既に導入されているが、農業分野、保健・医療・福祉分野、交通分野、安全・防災分野等にも活用される見込みである(表2参照)。

 センサーによって各分野の詳細な状況が把握・分析され、最適な制御がなされることによって、社会が抱える課題を解決する一助となることを期待したい。
表2 センサーネットワークの応用分野
表2 センサーネットワークの応用分野
出所:「エネルギーハーベスティング」(2014.10.25)日刊工業新聞社 より作成