2015年末に開催されたOPEC総会では油価回復に向け生産調整されるのではないかと期待されていた。しかし、経済制裁解除を目前に控えたイランが減産に反対し、OPEC全ての加盟国が同調すべきとするサウジアラビアと対立した。その結果、サウジアラビアが減産調整を放棄、米国シェールオイルとのシェア獲得争いに走ったことで、主だった産油国も増産を続けた。当然のことながら原油価格は下落し、一時WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)が1バレル30ドルを割り込んだ。これはリーマンショックの時よりも低い値である。
その後も油価は概ね1バレル50ドルを切るレベルで推移し、財政が悪化した産油国は方針転換しなければならない局面を迎えていた。2016年9月の臨時総会においてOPEC全体として日量3250~3500万バレルに抑えることで合意、これを踏まえ各国に減産目標を割り当てたのが11月の総会である。
合意内容の詳細を見てみよう。2016年10月の生産量を基準として、OPEC全体で日量120万バレルの減産を求めており、9月の臨時総会で決まった低い方の値に合わせたものとなっている。減産期間は2017年1月から半年間だが、状況によってはさらに半年間の延長もあるとしている。
個々の国に対しては、インドネシア、リビア、ナイジェリアが減産を免除された。インドネシアは原油の純輸入国になりOPECから外れることになったためであり、リビア、ナイジェリアは政情不安により大幅に原油生産量を落としているためである。
注目すべきは14カ国中イランのみが増産を許されたことだ。イラン自体は経済制裁前の日量400万バレルを回復しなければ減産はあり得ないとしていたが、大幅ダウンの日量380万バレルで合意、イラン、サウジアラビア両者のメンツを立てた格好となっている。この380万バレルという値もなかなか意味が深い。OPECは毎月“Monthly Oil Market Report”を発表しているが、OPEC加盟国の原油生産量として2種類の数字を出している。自己申告(direct communication)と外部の調査会社(secondary sources)による数字で、なぜこの2種類の数字を発表せざるを得ないのかは置いておくことにして、国によっては大きな開きがある。イランの場合、自己申告による10月の生産量は日量400万バレルに近い数字になっているが、調査会社によるものではとてもそんなレベルには達していない。380はこれらのちょうど中間の値となっているのである。
その他の国はどうであろうか。サウジアラビアはOPEC全減産量の4割を超える日量49万バレルを引き受け非常に減産量が多いイメージがあるが、上述の例外国を除き4.6%程度の均等の調整割合となっている。
(表1の中で、生産量は生産水準と調整幅から産出した値。OPEC crude oil production based on secondary sourcesの10月の値とは異なるものがある。)
表1 OPEC加盟国の減産目標
出所:“Monthly Oil Market Report”(OPEC)他各種資料より作成