前コラムでは西側陣営と中露陣営の対立が続くと見込まれるなかで、そのどちらにもくみしないグローバルサウスに対するアプローチを今まで以上に強化していく必要があることを述べた。特に、今年G7の議長国を務める日本が果たすべき役割は大きい。日本として目指すべきアプローチの一つは、国際的な協力枠組みやルール形成を通じた「ルールに基づく国際秩序」の再構築だ。
一部のグローバルサウスが持つ欧米に対する根強い不信感や、中国との経済・政治的関係を考えると、グローバルサウスを西側陣営に取り込むことは現実的ではない。民主主義陣営と権威主義国陣営のどちらかを選択するように迫ることや、欧米的な価値観を一方的に押し付けようとすることは、かえってグローバルサウスからの反発を招くことになり逆効果だ。G7や日本は「上から目線」で接するのではなく、対等な関係として、協力できる分野を模索するべきである。
日本はこれまで既に、法の支配や主権、自由貿易といった、ルールに基づく国際秩序を、「自由で開かれたインド太平洋構想(FOIP)」などを通じて打ち出してきた。これらの価値観はグローバルサウスとも共有可能であり、それを推進する日本は一定の支持を得られている。ASEAN有識者への調査では、日本が国際法を尊重し、支持していることに対して好意的な見方が多くみられる(図表1)。
一部のグローバルサウスが持つ欧米に対する根強い不信感や、中国との経済・政治的関係を考えると、グローバルサウスを西側陣営に取り込むことは現実的ではない。民主主義陣営と権威主義国陣営のどちらかを選択するように迫ることや、欧米的な価値観を一方的に押し付けようとすることは、かえってグローバルサウスからの反発を招くことになり逆効果だ。G7や日本は「上から目線」で接するのではなく、対等な関係として、協力できる分野を模索するべきである。
日本はこれまで既に、法の支配や主権、自由貿易といった、ルールに基づく国際秩序を、「自由で開かれたインド太平洋構想(FOIP)」などを通じて打ち出してきた。これらの価値観はグローバルサウスとも共有可能であり、それを推進する日本は一定の支持を得られている。ASEAN有識者への調査では、日本が国際法を尊重し、支持していることに対して好意的な見方が多くみられる(図表1)。
図表1 ASEAN識者へのアンケート調査(2023年)
加えて、2023年3月に岸田首相がインド世界問題評議会で行ったスピーチの中では、「FOIP協力の新たな柱」として4つの取り組みの柱を掲げ、気候変動や国際保健、食料安全保障などの世界共通の課題を、インド太平洋で連携することを打ち出している(図表2)。これらは、2023年1月に開催された「グローバルサウスの声サミット」でも議題となった分野であり(図表3)、グローバルサウスにとっても、連携による恩恵は大きい。
図表2 FOIPのための新たなプラン
図表3 「グローバルサウスの声サミット」の議題
日本は米中のようなハードパワーこそ持ち合わせていないが、米欧とのつながり(G7)やアジアの国々との良好な関係があり、日本が参加する多国間協調の枠組みには、グローバルサウスから多くのアジア諸国が参加している(図表4)。既存の枠組みも活用しながら、ルールに基づく国際秩序をアジアから他地域へも推進し、G7とグローバルサウスの橋渡し役を担うことが期待される。
図表4 日本が参加する多国間協調枠組み
図表5 各国首脳の訪問国数
もっとも、前掲図表1のASEAN有識者への調査の中では、日本が内政に気を取られることを懸念する声が過去1年で高まっていることには留意が必要だ。岸田首相はゴールデンウィーク期間中にアフリカ4カ国訪問を実現しており、G7の一員として日本がコミットメントの姿勢を打ち出せたと言える一方で、中国の影響力が強まっている中南米や中東には訪問できていない(図表5)。グローバルサウスとの関係を重視していることを示すためにも、首相や外相自身が積極的に外遊を行うことが求められる。