ウクライナ情勢をめぐって国際社会の分断が深まる中、「グローバルサウス(Global South)」と呼ばれる国々への注目が高まっている。2023年1月に実施されたダボス会議では「世界の分断」が一つのテーマであったが、その中でグローバルサウスの立ち位置が焦点となった。また同月、岸田首相は施政方針演説で、グローバルサウスへの関与を強化していく必要性に言及したほか、アフリカ歴訪後の記者会見では、5月に開催のG7広島サミットでも、グローバルサウスとの協力がテーマの一つになると述べている※1。
グローバルサウスとはどのような国々か。明確な定義はないが、概念が広まった1950~60年代は、「支援されるべき対象」「発展途上国」としての意味合いで使われることが多かった。例えば米バージニア大学のアン・コカス教授は、①冷戦後の「第三世界」に代わる呼称②南半球に存在するかどうかに関わらず相対的に貧しい国々を指す呼称③立場の弱い南の国々の政治的連帯を指す呼称の3つの側面があるとしている。
今、グローバルサウスに再びスポットライトが当たっているのは、これまでの途上国という枠組みを超え、経済的にも政治的にも国際社会の中で無視できない存在となっているからだ。本コラムでは、G77現加盟国(国連における途上国の協力グループ)のうち、中国を除いた国々をグローバルサウスとし※2、世界・日本にとってどのように重要か、そして日本がどのように関係構築すべきかを示したい。
存在感の高まるグローバルサウス。まず経済面では、2050年にかけて名目GDPの合計が米国や中国を上回る規模にまで急拡大すると見込まれる(図表1)。人口で見ると、2023年にインドが中国を上回って世界一となり、2050年にはグローバルサウスで全世界の3分の2を占める予測だ(図表2)。
グローバルサウスとはどのような国々か。明確な定義はないが、概念が広まった1950~60年代は、「支援されるべき対象」「発展途上国」としての意味合いで使われることが多かった。例えば米バージニア大学のアン・コカス教授は、①冷戦後の「第三世界」に代わる呼称②南半球に存在するかどうかに関わらず相対的に貧しい国々を指す呼称③立場の弱い南の国々の政治的連帯を指す呼称の3つの側面があるとしている。
今、グローバルサウスに再びスポットライトが当たっているのは、これまでの途上国という枠組みを超え、経済的にも政治的にも国際社会の中で無視できない存在となっているからだ。本コラムでは、G77現加盟国(国連における途上国の協力グループ)のうち、中国を除いた国々をグローバルサウスとし※2、世界・日本にとってどのように重要か、そして日本がどのように関係構築すべきかを示したい。
存在感の高まるグローバルサウス。まず経済面では、2050年にかけて名目GDPの合計が米国や中国を上回る規模にまで急拡大すると見込まれる(図表1)。人口で見ると、2023年にインドが中国を上回って世界一となり、2050年にはグローバルサウスで全世界の3分の2を占める予測だ(図表2)。
図表1 名目GDPシェアの予測
図表2 人口の予測
さらに、ウクライナ危機への対応では国際政治面でも存在感を示している。ウクライナ危機を受けて数回実施された対露非難決議では、主権や領土などの根本理念に関する投票でグローバルサウスの過半数が「賛成」する一方、「棄権」や「無投票」の国も多い。さらに資格停止や賠償といった面に一歩踏み込んだ決議では「賛成」の割合は半分を割っている(図表3)。一国一票を原則とする国連投票において、グローバルサウスの意見は無視できない。
加えて、グローバルサウスの中には西側諸国による対露制裁に同調せず、逆にロシアとの経済関係を深めることで恩恵を受けている国もある。例えば、インドはロシアから安価なエネルギー燃料を輸入している(図表4)。ロシア経済の落ち込み幅が当初の想定よりも小さかった背景には、こうした動きがあるとも指摘されている。
加えて、グローバルサウスの中には西側諸国による対露制裁に同調せず、逆にロシアとの経済関係を深めることで恩恵を受けている国もある。例えば、インドはロシアから安価なエネルギー燃料を輸入している(図表4)。ロシア経済の落ち込み幅が当初の想定よりも小さかった背景には、こうした動きがあるとも指摘されている。
図表3 対露非難決議における投票状況
図表4 ロシアとの輸出入取引額