2015年に欧州委員会が初めてサーキュラーエコノミー(CE)に関する政策パッケージを発表してから既に8年が経過しようとしている。CEとは資源の効率的・循環的利用を通して、環境影響と経済成長をデカップリング(分離)させようとする経済モデルの考え方である。これまでのリニアエコノミー、いわゆる大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済活動では、資源消費量の多寡と経済成長のスピードは一般的に正の相関関係にあり、資源消費の量を抑制することは経済活動の縮小につながる関係にある。しかしCEはこれを転換しようとしている。
CEの概念は社会に広く浸透しつつあり、すでに多く取り組まれているリサイクルに加え、修理やリファービッシュ(中古品の再生)、シェアリングなど、循環による経済価値を生み出す新たな事業形態へも注目が集まっている。またリサイクルに関しても、これまで進めてきた廃棄物処理としてのリサイクルという発想を超えて、資源を再び社会に供給するための仕組みとして捉えなおす必要がある。国や自治体だけでなく、企業としてもこのような幅広いCEの概念に貢献・適合していくことが求められている。
企業が自らのCE移行を推進するためには、自社の事業内容を踏まえて、資源消費を抑制しながらも経済価値を追求することが求められる。さらには、CEへの移行に即して転換した先の自社事業のあり方をゴールに据え、そこに向けた進捗を測るための「指標の設定」をすることが不可欠である(図)。これまでの資源循環では一般的にリサイクルできないごみを出さないこと(ゼロウェイスト)やそれによる最終処分場の残余年数の延長がゴールとして社会で認識されていたため、取り組みの進捗の度合いを測る指標としては、企業活動による廃棄物の最終処分量、熱回収を含めたリサイクル量といった指標がよく用いられてきた。しかし昨今のCEの概念を反映させた評価では、「インプットにおける循環の割合(リサイクル材の使用)」や「資源利用量あたりの経済的価値」など、より多くの視点に基づく評価が必要となる。CEへの移行に向けて、企業が自らの活動を評価・開示するための指標についてもアップデートが求められている。