新型コロナウイルスの感染は欧州・米国へと飛び火し、発生源である中国を大幅に上回るペースで拡大している。感染拡大の影響は3つのルートで経済に波及する。①人・モノの動きの世界的な遮断、②国内の経済活動抑制、③国際金融市場の不安定化だ。コロナ危機による経済影響の本質は、外出規制などによる需要蒸発であり、潜在需要は存在することだ。感染拡大の間に、企業の資金繰りや雇用が維持できれば終息後に景気は回復するが、維持できなければマインドや雇用・所得が悪化し、終息後も経済低迷が長期化しかねない。
今後の感染拡大ペースや終息時期も不透明なため、世界経済・日本経済の見通しを複数のシナリオで提示する。本予測は、一定の前提に基づき試算したものであるが、日々状況は変化しており、今後の世界の感染拡大の深刻度や期間、各国の政策対応とその効果、金融市場の動向等により試算結果も変わるため、幅をもってみる必要がある。
シナリオ①:経済活動抑制のピークアウトが6月末の場合
— 20年の世界経済成長率はコロナ危機前の前年比+2.7%から+0.5%へ下方修正
— 米国▲0.4%、欧州▲1.9%、中国+2.3%、経済損失は世界全体で200兆円(GDP比2.2%)
シナリオ②:経済活動抑制のピークアウトが12月末の場合
— 20年の世界経済成長率は前年比▲0.5%へ下方修正(※09年以来のマイナス成長)
— 米国▲1.7%、欧州▲3.3%、中国+0.4%、経済損失は世界全体で320兆円(GDP比3.4%)
また、新型コロナウイルスは、終息後の国際社会に大きな爪痕を残しかねない。排他的風潮の強まりや感染源を巡る米中対立により、世界の分断が一段と加速するリスクがある。各国国内でも、失業の長期化により所得格差が拡大すれば、社会の分断を一段と深めかねない。一方、今回の教訓から、世界でデジタルシフトが一気に進み、新ビジネスが創出される可能性も秘めている。