食農分野の環境負荷削減を実現していく上での方策や、有望なイノベーションは既に存在する。問題は、いかにそれらを社会実装していくかである。
①生産現場への環境負荷削減技術の導入・普及ポイント1:GHG削減効果の価値化による動機づけ
- GHG削減効果の価値化では、近年導入が始まった農林水産分野のJクレジット※等のカーボン・クレジット制度が有望。食料サプライチェーンの環境負荷削減に、サプライチェーン外の資金が入る余地が生まれることの意義が大
②生産現場への環境負荷削減技術の導入・普及ポイント2:サプライチェーン連携
- 個別企業による取り組みの限界を見極め、同業他社をまたいだ全体の巻き込みが重要
③生産現場への環境負荷削減技術の導入・普及ポイント3:コミュニケーションによる消費者の行動変容
- 生産の環境負荷削減に関する取り組みや、健康増進上の意義といった情報を見える化し、商品に付加して消費者に提供することにより、参加意識を高め行動変容を促すことを目指す必要性
④次世代タンパクの普及ポイント
- 培養肉は、早期のルール作りや、表示などの消費者とのコミュニケーションの仕組み作りが優先課題。欧米で先行する植物性肉・乳でも、日本の食品製造業の食味・食感向上技術に期待。また、陸上養殖システムも日本が技術的に優位性を持ちうる領域
これらの取り組みを実現していくには、豊かな食生活と環境の両立に向けて、グローバルに市場展開したりグローバルな原料調達網を有している商社・食品製造業・流通業などが中心となって、技術的・社会的なイノベーションを起こしていくことが求められる。個々の企業の取り組みだけではなく、大企業間の連携・協業や、課題解決に対し有望な技術を有する研究機関・スタートアップ・ベンチャー企業等との連携を通じた、この分野へのさらなる投資、研究開発・ビジネス展開、消費者を巻き込んだ取り組み促進に期待したい。