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【提言】エネルギー政策と資源循環政策の一体的推進

カーボンニュートラル資源立国の実現に向けて

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2023.9.21

株式会社三菱総合研究所

エネルギー・サステナビリティ・食農
株式会社三菱総合研究所(代表取締役社長:籔田健二)は、エネルギー政策と資源循環政策の一体的推進に関する政策提言をとりまとめました。資源循環を活用してカーボンニュートラルと経済安全保障の両立を実現するために必要な政策を提言します。

カーボンニュートラルと経済安全保障の両立が必要

パリ協定を契機として、世界はカーボンニュートラル(CN)の実現を目標として掲げてきた。しかし、ロシアのウクライナ侵攻により、短期的には経済安全保障を重視せざるを得なくなった。それでも、CN実現の必要性は不変であり、中長期的にはCNと経済安全保障の両立が必要である。

日本は、CN分野における多くの指標で欧米や中国に先行されているほか、エネルギー資源、太陽光発電パネルおよび蓄電池等で必要な金属資源も輸入に依存しており、経済安全保障上も課題を抱えている。

目指すべき姿は「カーボンニュートラル資源立国」

日本がCNと経済安全保障の両立を図るには、資源循環が鍵を握っている。①再生可能エネルギー資源、②蓄電池等に含まれる金属資源、③鉄スクラップ・廃プラスチック等の循環資源、これら3つの資源をカーボンニュートラル資源(CN資源)と定義する。資源に乏しい日本は、まずこれらのCN資源を積極的に国内に取り込み、国内で循環させるとともに、必要な技術力を磨くことも必要である。その結果、再生可能エネルギー発電や蓄電池といった成長分野への投資が進み、素材産業のCN対応も進むことで、日本全体のCNと経済安全保障の両立が図られる。これこそが目指すべき姿、「カーボンニュートラル資源立国」である。

資源循環が、2050年時点でCNと経済安全保障に寄与する効果は、以下のとおり定量的に示せる。
資源循環がCNと経済安全保障に寄与する効果(2050年時点)

カーボンニュートラル資源立国の実現方策

目指すべき姿を実現するためには、①サーキュラーエコノミー型ビジネスモデルの確立、②ビジネスモデルの確立に必要な環境整備、という2つの方策が必要である。

①のビジネスモデルとしては、サブスクリプションを活用したCN資源確保モデル、CN資源を活用したCN製品のブランド化モデル、さらにこれら2つのモデルを掛け合わせた海外流出CN資源管理モデル、が有効と考えられる。また、②のビジネスモデルの確立に必要な環境整備として、サーキュラーエコノミー(CE)への貢献の見える化、そしてDXを活用した基盤データの整備が考えられる。後者の基盤データの整備の具体例としては、欧州で提唱されているデジタルプロダクトパスポートがある。

カーボンニュートラル資源立国の実現に必要な政策提言

カーボンニュートラル資源立国の実現に必要な3つの政策を提言する。

①エネルギー政策と資源循環政策の一体的な推進

エネルギー政策の柱と言えるエネルギー基本計画にて、CNに向けては資源循環が不可欠であり、資源循環政策と一体で進めることが必要、という点に言及すべきである。対応する長期エネルギー需給見通しでも、資源循環がCNに与える貢献を定量評価することが望ましい。次いで、エネルギー対策特別会計やGX経済移行債の予算使途として、CNに貢献する資源循環の取り組みに対して、積極的に割り当てるべきである。さらに、これまでエネルギー分野・資源循環分野それぞれで講じてきた施策のグッドプラクティスを棚卸しし、相互に活用することも必要である。

②適切な評価指標に基づく企業取り組みの促進

まず、サーキュラーエコノミーへの貢献を評価できる適切な指標を構築し、当該指標に基づき企業が目標を掲げ、取り組みを進めるべきである。そのための指標の検討や目標設定は、サーキュラーエコノミーに関する産官学パートナーシップの活用が有効である。その際、企業の目標達成に対しては、補完的な機能としてプラスチッククレジットの活用を検討すべきである。

③デジタルプロダクトパスポート構築の推進

欧州で提唱されているデジタルプロダクトパスポートの構築を日本でも進めるべきである。そのために必要な取り組みとして、まず新たな分散協調型エコシステムOuranos Ecosystemに対して、幅広いステークホルダーが関与し、官民一体となってサプライチェーンデータの共有を進めるべきである。同時に、Ouranos Ecosystemのもとでデータ連携を進めることで得られるメリットについて、政府が主体的に情報を発信していく必要がある。さらに、業界ごと・製品ごとにサプライチェーンデータの共有やデジタルプロダクトパスポートの構築を進めるために、業界団体や企業によるコンソーシアムを形成して民間主導での運営を進めるべきである。
こうした政策が実現した先には、サーキュラーエコノミー型のビジネスモデルが進展し、カーボンニュートラルと経済安全保障が両立したカーボンニュートラル資源立国・日本が見えてくるだろう。

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