特に近年のグローバルネットワークの発達によって、従来の個別単独のシステムは接続・統合され、例えば自動運転に代表されるような自律分散協調型AIシステムなど、相互につながった巨大システムの中で活用される「新技術」も増えていくことが見込まれる。
このような新技術には、新たな事業の機会と共に常に新たなリスクが存在している。これらのリスクを取れる企業にとっては新分野・グローバル市場への事業展開というメリットがあるのに対し、リスクを取れない企業にとっては事業展開の機会を失うことにもなりかねない。リスクを取るためには、リスクを予見すると共に、予見できなかった場合の対応能力も必要となる。
リスクマネジメントの取り組み方に関しては、国内外の企業で大きな差異がある。例えば欧州のリスクマネジメントは大航海時代に発達した保険事業との関連性が深く、損得両面を考慮した民間ビジネスとして発展してきたが、同時に、リスクマネジメントに失敗した企業・事業は市場からの退場を余儀なくされてきた。
一方、国内では、海外で形作られたリスク管理基準を参考にしつつも、さらに厳しい規制を国が一律に策定・整備することで、効率的な高度経済成長、中小企業も含めた国内産業保護、安全・安心な社会を実現した。
しかし現代では最新技術の発達速度が非常に速くなったため、国による規制が最新技術に追いつくことが難しくなり、産業競争力を十分に発揮できない状況に陥っている。「新技術」「グローバル市場」への対応が迫られている現代では、リスクマネジメントの考え方についてもグローバルスタンダードを参考に、損失を予防するだけではなく便益とのバランスを考慮したスタイルを取り入れていく必要がある。
グローバルスタンダードに準拠したリスクマネジメントを実現するためには、民間企業自身では例えば次の点に留意するとともに、そのための経営資源の配分が必要となる。