ASEANは人口増加と経済成長に伴うエネルギー消費の増大が懸念されている。日本の人口が2021年から2050年に向けて1.25億人から1.04億人に減少する一方、ASEANは6.76億人から7.90億人に増加し、人口ボーナス期も2037年まで続くと見られる。このような人口増加に合わせ、経済成長も堅調に続くと予想されており、国際エネルギー機関(IEA)は、2050年の電力需要は2021年実績の2.7倍になると推計している(図1)。
地理的にも近く、歴史的にも関係の深いASEANとの連携強化は、日本の経済成長および経済安全保障を確保する上でもますます重要になってきている。
しかし、ASEANにとっては中国との経済的な関係が大きなウエートを占めてきている。貿易額の大きさもさることながら、年間の投資額も2021年には日本からよりも中国の方が上回っている(図2)。ASEANにとっては中国が最も影響力のある国であるとする調査結果※1もあり、近年ではASEANから見た日本の経済的な重要性は低下傾向にある。
図1 ASEANと日本の電力需要の見通し
出所:IEA「World Energy Outlook」(2022)公表政策シナリオ(STEPS)を基に三菱総合研究所作成
図2 ASEANへの外国直接投資(フロー)の推移
注:2018年の米国の対外直接投資は、ASEAN向けに限らず、中東・アフリカを除いて減少。業種別では、主に金融持ち株会社が大幅なマイナス(引き揚げ超過)となっている。
出所:ASEANStatsを基に三菱総合研究所作成