能登地域は今回の地震で、有形固定資産(ストック)と付加価値(フロー)の両面で大きな被害を受けた(詳細は「
能登半島地震の経済影響(前編)」参照)。地域経済の再建に向けて、多角的な支援策が進められている。
第一に、政府による財政面での支援である。政府は1月末に「被災者の生活と生業(なりわい)支援のためのパッケージ」を決定した。これに基づき、2023年度一般会計予算の予備費から1,500億円超の支出がなされたほか、2024年度予算案の予備費も当初の5,000億円から1兆円に倍増され、うち1,389億円の支出が4月に決定した。また地域の観光需要の回復を後押しすべく、北陸応援割(1泊2万円を上限に宿泊費の50%を補助)も3月中旬から4月末にかけて実施された。
第二に、多様な被災地支援チャネルを活用した民間支援が挙げられる。一般の個人や企業が被災地を金銭的に支援する方法は、日本赤十字社などを通じた義援金振込が一般的であったが、その他のチャネルを活用する取り組みが広がりを見せている。その1つが、「代理寄付」を活用したふるさと納税である。「返礼品なし」のふるさと納税は、義援金に代わる支援方法として挙げられるが、「返礼品なし」であってもふるさと納税を受けた自治体は事務処理が必要になる。被災した自治体としてはそれをこなす余裕がないため、他の自治体が事務処理を代行することで当該自治体の負担を軽減し、寄付金は他の自治体経由で被災自治体に渡される「代理寄付」の仕組みが活用されている。実際に、この仕組みで集まった災害支援金・寄付金は、「さとふる」と「ふるさとチョイス」の合計で約35億円となっている(2024年4月下旬時点)。
その他の事例として、クラウドファンディングによる支援もある。例えば「輪島漆器の工房再建をしたい」「病院の復旧を支援したい」など個別の被災先を直接的に応援したいという声に応えるため、クラウドファンディングのプラットフォームを活用して資金を募るプロジェクトが多数立ち上がっている。
第三に、全国からの人的支援である。民間企業社員やボランティアスタッフによる復旧・復興支援に加え、全国の自治体からも合計1,000人超の支援メンバーが現地に入った。2011年の東日本大震災時に、近畿地方の自治体などで構成する関西広域連合が主導するかたちで、被災自治体に対して支援自治体を割り当てる「対口(たいこう)支援(カウンターパート支援)」が始まり、2018年に総務省の枠組みとして定着した。今回も、珠洲市には兵庫県・神戸市など、輪島市には大阪府・大阪市など、能登町には宮城県など担当自治体が調整され、過去の震災復興経験を生かした人的支援が行われている。