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内外経済見通し

ウィズコロナ下での世界・日本経済の展望|2022年2月

2021~2023年度の内外経済見通し

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2022.2.16

株式会社三菱総合研究所

株式会社三菱総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:籔田健二)は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大を踏まえ、経済対策提言や世界・日本経済の見通しを随時発表してきました。今回は2月半ばまでの世界経済・政治の状況、および日本の2021年10-12月期GDP速報の公表を踏まえ、世界・日本経済見通しの最新版を公表します。
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世界経済

21年10-12月期の世界経済は、防疫と経済の両立進展により、物価上昇圧力が強まるなかでも高めの成長率となった。オミクロン変異株の感染急拡大により、22年入り後は外出行動の抑制から世界経済の拡大ペースが鈍化しているが、重症化率や死亡率の低さを踏まえ、防疫措置を緩和する動きも広がっている。

22年以降の世界経済は、ワクチン接種等によりコロナとの共生が進むなかで、財政・金融政策による景気押上げ効果が段階的に剥落し、消費や投資を柱とする自律的な回復へのシフトが本格化するとの見方に変更はない。ただし、需給逼迫などを背景に、物価と金利の上昇圧力が前回11月見通し時点よりも強まってきており、世界経済の成長率の下振れ要因となろう。今後の注目点は、次の4点である。

第一に、物価上昇圧力である。供給網混乱など短期的な物価上昇圧力は段階的に緩和されるものの、23年にかけて米欧の消費者物価は2%を超える上昇が続く可能性が高い。①家計の過剰貯蓄が消費に回ることによる需要の強さに加え、構造的要因として②人手不足深刻化による賃金の上昇、③脱炭素化による素原材料価格の上昇も、物価上昇に寄与する。名目賃金は上昇が予想されるものの、実質賃金の伸び鈍化が消費の下振れ要因となろう。

第二に、米国の金融政策である。インフレ圧力の強まりを受けてFRBは22年3月に利上げを開始する見込み。22年内に計1.25%ポイント、23年内に追加で計0.75%ポイントの利上げを予想する。米国金利上昇は、米国の消費や投資の抑制要因となるほか、国際金融市場を通じて新興国の通貨安・インフレ圧力を一段と強める要因となる。

第三に、消費の回復力である。米欧を中心に物価と金利の上昇圧力が消費の抑制要因となるが、人手不足による雇用・所得環境の改善が見込まれるなか、コロナ危機下で積み上がった貯蓄(日米欧でGDPの約12%)が消費に回ることが予想される。消費は23年にかけて総じて堅調な回復を見込む。

第四に、グリーンやデジタルへの投資である。消費とともに経済の自律的な回復力の強さを左右する要素が投資だ。脱炭素社会への移行やデジタルトランスフォーメーションには、巨額の投資が必要になる。22年以降、欧州復興基金、米国インフラ投資計画などを通じた投資拡大に加え、民間部門でも中長期的な産業構造転換に必要な投資が加速。23年にかけて世界経済の成長押上げ要因となるだろう。

これらを踏まえ、世界経済の実質GDP成長率は、22年が前年比+3.5%(前回11月見通しから▲0.2%ポイント下方修正)、23年が同+3.0%と予測する。

先行きのリスクは、第一に、米国長期金利上昇による資産価格の過度な調整である。米国の利上げが市場予想を上回るペースで実施され長期金利が急騰すれば、株価や住宅価格の急落、金融市場の混乱を招き、世界経済の下振れ要因となる。第二に、中国経済失速と不良債権増加の悪循環である。中国経済の成長力が中長期的に減速局面にあるなか、債務問題の深刻化や輸出環境の悪化などをきっかけに中国経済の期待成長率が大きく低下すれば、投資・消費が抑制され、経済失速と不良債権増加の悪循環に陥りかねない。第三に、米中間選挙後の米政権運営の停滞である。中間選挙で大敗すればバイデン政権の求心力が一段と低下、富裕層課税や気候変動対策など政策の実現可能性が低下し、成長の下振れ要因となる。

日本経済

日本経済は回復傾向にあるが、22年1-3月期はオミクロン変異株の感染拡大を背景に、成長鈍化を予想する。感染がピークアウトすれば、経済活動の正常化に伴う雇用・所得環境の改善に加え、コロナ危機下で積み上がった50兆円の過剰貯蓄が消費に回ることから、22年半ばにかけて高めの伸びとなろう。22年1-3月期にはコロナ危機前のGDP水準を回復する見込み。23年以降は、ペントアップ需要の剥落を背景に、潜在成長率並みの成長率に落ち着くと予想する。実質GDP成長率は、22年度は同+2.9%、23年度は同+1.2%と予測する。

米国経済

米国経済は、長期化する供給制約や物価上昇が景気の下押し圧力となるも、雇用・所得環境の改善により総じて回復基調を維持している。22年は、財政・金融政策の危機対応に支えられた成長から、自律的な成長へと移行する一年となるだろう。過剰貯蓄や雇用環境の回復によってペントアップ需要の継続が期待されるほか、21年11月に成立したインフラ投資計画も下支えしよう。ただし、オミクロン変異株の感染拡大による22年1-3月期の成長鈍化、金融政策の正常化加速に伴い、22年の実質GDP成長率は前年比+3.9%と、前回11月見通し(同+4.2%)から下方修正する。23年はペントアップ需要の剥落などから成長は鈍化するが、供給制約の緩和もあり同+2.4%と潜在成長率を上回る成長を見込む。

欧州経済

欧州経済は、21年末からの感染急拡大により22年1-3月期の成長は鈍化する見込み。ただし、デジタルCOVID証明書などの活用により感染対策と経済活動を両立する動きを進めており、経済の回復基調は維持している。22年は、ウクライナ情勢緊迫化によるエネルギー供給の不安定化や人手不足感の高まりが経済活動の重しとなるが、本格稼働する欧州復興基金を活用したグリーン・デジタル分野の投資が成長を押し上げるだろう。23年は政策効果が縮小も自律的な成長に移行するとみる。欧州5カ国平均の実質GDP成長率は、22年が前年比+4.0%、23年が同+2.6%と予測する。

中国経済

中国経済は、恒大集団の信用不安に端を発した不動産市場の冷え込み、ゼロコロナ政策下の経済活動抑制から成長減速が継続している。こうした状況下、22年後半に開催予定の中国共産党大会で3期目入りを目指す習政権は、安定成長へ配慮した経済政策方針を掲げており、経済の下振れリスクが高まる際には、政府の景気下支え策の出動が見込まれる。22年の実質GDP成長率は、年前半の成長下振れにより、前回11月見通しの前年比+5.2%から同+5.0%に下方修正するが、年央以降は不動産市場の調整が一服、経済活動の再開により持ち直す展開を予想する。23年は、供給制約の緩和や経済活動の正常化から、潜在成長率並みの同+5.2%と、前年から小幅に成長率が回復すると予測する。

新興国経済

新興国は、経済活動の段階的な再開により21年10-12月期に成長の勢いを強めた。新興国経済が、先進国経済の正常化に伴い輸出主導で成長回復する想定は不変だが、オミクロン株の感染拡大などから経済回復ペースが緩やかになることを想定し、総じて下方修正する。米国の金利上昇を契機に資本流出や通貨安が進展し、防衛的利上げを強いられれば、経済の回復ペースが鈍化する可能性がある。新興国の脱炭素への取り組みは、投資拡大による成長上振れ、素原材料価格上昇による成長下振れといった経済へ正負両面の影響がある。

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