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内外経済見通し

ウィズコロナ下での世界・日本経済の展望|2022年8月

2022~2023年度の内外経済見通し

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2022.8.16

株式会社三菱総合研究所

株式会社三菱総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:籔田健二)は、ロシアのウクライナ侵攻を含む8月半ばまでの世界経済・政治の状況、および日本の2022年4-6月期GDP速報の公表を踏まえ、世界・日本経済見通しの最新版を公表します。
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世界経済

22年4-6月期の世界経済は、内需の柱である消費が総じて落ち込み、季調済前期比では極めて低い成長にとどまったとみられる。中国ではゼロコロナ政策による主要都市でのロックダウン、米国・欧州では、物価上昇圧力の強まりや金利の上昇、株安による逆資産効果が消費の重しとなった。

先行きの世界経済は、中国などアジア経済は総じて持ち直す一方で、欧米経済は高いインフレ圧力と金融引き締めが景気の下振れ要因となり、22年は前年比+2.3%、23年は同+2.6%と潜在的な成長率である3%を下回ると予測する(前回5月見通しから、それぞれ▲0.6%ポイント、▲0.3%ポイント下方修正)。23年にかけての世界経済は、2%台の減速にとどまるか、複数の主要国が景気後退に陥る大幅な減速となるかの瀬戸際にある。今後の見通しを左右する要素として注目すべきは、次の4点である。

①ウクライナ情勢 —— 戦争の長期化や経済制裁と報復の応酬によって、食料・資源などの供給不足・価格上昇が世界経済の下振れ要因となる。黒海周辺地域は食料や肥料の主要輸出拠点であり、世界の食料供給への影響が懸念される。資源についても、中国やインドなどがロシアからの輸入を拡大しており、ロシアは経済制裁への報復として、西側諸国への供給を一段と抑制する可能性がある。

②物価上昇圧力 —— 米国や欧州を中心に、人手不足を背景とする賃金上昇によりデマンドプル型のインフレ圧力が強まりやすい状況にある。資源価格上昇などによるコストプッシュ型のインフレもあり、総じて賃金よりも物価の上昇率が高い展開が予想され、実質賃金ではマイナスの伸びとなるだろう。特に米国で労働力不足が深刻であり、(1)高い賃金上昇率、(2)高い期待インフレ率、(3)高い価格転嫁率という条件下で、デマンドプル型の高い物価上昇圧力が継続する可能性に要注意だ。

③米国の金融政策 —— デマンドプル型インフレ圧力を抑制するために、金融政策の役割は大きい。米国FRBは、景気に対して引き締め効果を発揮する水準にまで政策金利を引き上げ、インフレ抑制の目途が立つまで、引き締め的な金利水準を継続するとみられる。物価上昇圧力が引き続き強い状況が予想されるなか、インフレ抑制に向けて必要に応じて利上げ幅の更なる拡大や量的縮小ペースの加速も想定される。

④金融市場 —— コロナ危機下で国・企業・家計の債務は世界的に拡大しており、金利上昇で債務者の返済負担が高まる。また、金融引き締めによりリスク資産のウェイトを見直す動きが強まるなか、信用リスクの高い主体の新規資金調達が制約される。こうした金融環境のタイト化が消費や投資の下振れ要因となる。

先行きのリスクは、第一に、ロシアから西側諸国への資源の供給停止である。ロシアが経済制裁への報復として非友好国とみなす相手向けの輸出を停止すれば、国際市況が一段と高騰し、欧米を中心に非常に高いインフレ率が継続する可能性が高まる。第二に、過度な金融引き締めによる米国経済の景気後退である。インフレが収まらない場合には、景気減速下でも金融引き締めの一段の強化や長期化を余儀なくされる可能性がある。金融市場の動揺や需要の過度な冷え込みを通じて米国経済が景気後退となる可能性が高まる。第三に、中国経済失速と不良債権増加の悪循環である。ゼロコロナ政策の厳格な運用などをきっかけに、中国経済の期待成長率が大きく低下すれば、投資・消費が抑制され、成長失速と不良債権増加の悪循環に陥りかねない。

日本経済

日本経済は、コロナの感染状況や供給制約に左右されつつも、持ち直し傾向にある。22年7-9月期以降は、感染状況による振れを伴いつつも、堅調な雇用・所得環境の下、コロナ禍で先送りされたペントアップ需要の顕在化などが国内需要を押し上げるだろう。企業活動に対する供給制約も、徐々に解消に向かうとみる。一方、米国・欧州を中心とする海外経済の減速は輸出の下押し圧力となる。これらを踏まえ、22年度のGDPは前年比+1.7%と、前回見通し(2次QE後6月時点:同+2.3%)より鈍るとみる。23年度は、ペントアップ需要の一服から減速するものの、賃金上昇を背景に内需が底堅く推移するほか、自動車の挽回生産も輸出を下支えし、同+1.4%(同+1.2%から上方修正)と潜在成長率を上回る伸びを予想する。

米国経済

米国経済は、物価上昇による消費下押しと利上げによる投資抑制によって減速している。こうした中でも、足元の雇用環境は堅調であり、賃金上昇が続いていることから、需要面・供給面双方からの物価上昇圧力は根強く、高インフレ鎮静化の道筋は立っていない。 23年にかけて、FRBによる金融引き締め継続が想定され、22・23年の米国経済の成長率は、大きく減速すると見込む。22年は前年比+1.7%、23年は同+1.5%と、いずれも5月見通し(同+3.4%、+2.2%)から大幅に下方修正。特に利上げの影響が大きくなる23年は、潜在成長率以下の成長にとどまるだろう。加えて、物価の高止まりによって金融引き締めがさらに加速した場合には、景気後退に陥る恐れもある。

欧州経済

欧州経済は、ウクライナ危機の長期化と 記録的な物価高により減速を見込む。ロシアからの天然ガス供給は依然として不安定であり、エネルギー需要が高まる冬に向けたエネルギー確保が、先行きの経済活動を左右する。仮に、ロシアからのエネルギー供給が停止すれば、ドイツを中心に経済活動が大きく制限され、景気後退に陥るだろう。内外需環境の悪化から、欧州主要5カ国の実質GDP成長率は、22年が前年比+2.6%、23年が同+0.6%と、いずれも前回5月見通し(同+2.7%、+2.1%)から下方修正する。ECBは物価安定を重視し、利上げの継続を見込むが、リスクが顕在化し景気後退に陥れば利上げを休止するとみる。

新興国経済

新興国は、経済活動の正常化により内需中心の成長回復を見込む。ただし、インフレ圧力増大、先進国の利上げ前倒しといった海外起点の成長引き下げ要因への耐性が試される局面にある。インドネシアなどの資源輸出国は資源高の恩恵の享受が見込まれる一方、タイなどの工業製品輸出国は、輸入コスト上昇の輸出価格への転嫁の有無が試される。経常収支の赤字国や外貨準備の蓄積が十分でない国、欧州・ロシア依存度が高い国は資本流出リスクへ配慮した利上げなどが成長の下振れ圧力となろう。

中国経済

中国経済は、ゼロコロナ政策の継続が成長の足かせとなる。3期目入りを狙う習政権は、22年後半の中国共産党大会までは、感染症抑制の優先度は高いことが想定され、ゼロコロナ政策の運用によって成長回復のモメンタムが左右されるであろう。ただし、手厚い景気対策、家計貯蓄の増加、不動産市場の在庫調整の進展から、行動抑制が緩和されれば経済回復が進展する環境は整いつつある。22年中は、感染症の完全沈静化は困難で一定の行動抑制策が継続することを想定し、22年下半期の実質GDP成長率は前年比5%前半を見込む。22年の実質GDP成長率は、前回5月見通しの同+4.8%から同+4.0%へ下方修正する。23年は、感染症拡大の沈静化に伴う行動抑制の緩和による家計消費・投資の活発化を想定し、前回見通しの同+5.2%から同+5.5%に上方修正する。

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